記事のポイント
①米インフレ抑制法で、2030年までにGHG排出量40%削減
②削減量は、米国の家庭からの排出量1年分に相当
③脱炭素化に向けた2030年目標実現に、大きな1歩
8月に成立した米インフレ抑制法は、気候変動と脱炭素化を進めるために、よりクリーンで近代的なエネルギーシステムに3690億米ドルの投資を盛り込んだ。本法案によるGHG排出削減効果を分析した米国エネルギー省(DOE)によると、2030年のGHG排出量は2005年比で40%の削減となる。バイデン政権の掲げる2030年に50~52%削減の目標達成を大きく後押しすることになる。(北村 佳代子)
米国の2020年のGHG排出量は、2005年比21%削減の52億2200万トンと、世界で2番目に多い。DOEでは、2021年11月に成立した超党派インフラ投資・雇用法と今回のインフレ抑制法の2つの法案だけで、2030年までに約10億トンのGHG排出量削減効果があるとする。
他の条項も考慮すると計11億5000万トン近い削減が見込め、この削減量は、米国で各家庭が1年間で排出する量の合計値に近い。
インフレ抑制法は、家庭内のエネルギーを改善し、太陽光発電やEVを導入した勤労世帯に対して税制優遇措置を取ることで、エネルギーコストの低減を図る。同時に、クリーンエネルギー関連の国内製造業の支援を通じて、ゲームチェンジャーとなりうるイノベーションの創出を促進する。
DOEによると、米エネルギー長官のジェニファー・グランホルム氏は「インフレ抑制法の可決は、GHG排出量の40%削減を可能にする歴史的な偉業だ。超党派インフラ投資・雇用法とCHIPS法(2022年7月可決の半導体業界の支援法案)と合わせた一連の投資は、米国経済を変革し、気候目標の達成に向けてより近づけるものだ。
この功績は、新しいクリーンエネルギーによる経済を米国に構築するというバイデン大統領の公約を実現するものだ。各家庭のエネルギーコストを下げ、気候変動にも対応しながら、同時に多くの雇用創出につながる」と述べた。