上水道の水圧利用で年40万kW時を発電

この小さな設備が「大宮発電所」のすべてだ(さいたま市大宮区)

上水道の水圧と流量を利用して、配水場内の水流から小規模な水力発電をする試みが広がっている。さいたま市水道局は、大宮配水場(さいたま市大宮区)の中に「大宮発電所」を設置した。2011年4月から稼働し、つくった電気を自家消費して約35%の節電を実現している。

5月16日に同発電所で施設見学会が開催された。東日本大震災の影響で、再生可能エネルギーや水道事業への関心が高まった結果、近隣の住宅地や地元の市議会・自治会などから、主催者の予想を大きく上回る約90人が参加した。

浄水場は、広い地域に水を供給するために、ポンプで圧をかけて送水している。それを受け取る配水場では、減圧弁で適度な水圧にしてから住宅などに配水する。埼玉県大久保浄水場から近い大宮配水場では、遠い配水場よりも勢いのある水を受け取るため、これを発電に使うことにした。

配管に出力50kWの水車発電機を設置することで、従来の減圧弁でなく水車で圧を減らすと同時に、年間40万kW時の電気を生み出せるようになった。

同事業は、埼玉県企業局とさいたま市水道局、および東京電力の100%子会社である東京発電(東京都港区)の共同事業である。さいたま市水道局は、大宮発電所でつくった電気を売電せずに、配水ポンプを動かすために自家消費している。CO2排出量の削減分など「環境付加価値」はグリーン電力証書の形で第三者に移譲し、その収益は県と市とで等分する。東京発電は同発電所の所有者として、運転や保守など運営全般を担う。

24時間安定して発電できる水力は、太陽光や風力に比べて設備利用率が高い。出力1000kW以下の小規模な水力の設備利用率は70~80%と特に優れている。また、ダムによる大規模発電のように自然環境を乱すこともなく、既存の施設で未利用エネルギーを有効活用できる。

東京発電は、川崎市水道局(神奈川県)や千葉県水道局など複数の水道局と共同事業を展開している。さいたま市水道局では、夏季の節電に間に合うように、さらに2件の小水力発電所を準備中だ。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年5月17日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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