仮設住宅でお年寄りを一人にしない取り組み

仮設住宅の入居者の交流をいかにして深めるかが課題だ

東日本大震災の被災地で、仮設住宅に入居する人たち同士の交流をどう進めるかが課題になっている。お年寄りなどが部屋に閉じこもるケースも多く、孤独死を招きかねないからだ。

東北地方に秋空が広がった25日、岩手県大槌町の恵水講(えみつこ)地区にある仮設住宅で、東京の医療法人龍岡会による昼の炊き出しが行われた。松茸を使ったご飯、焼き物、お吸い物などを配り、野外に用意したベンチで食べてもらうようにしたが、ほとんどの人は部屋に持ち帰ってしまう。

だが途中トラブルがあり1時間ほど配給が遅れることになると、時間をもてあました入居者同士がベンチに座り、次第に会話が始まった。現地の復興支援団体パレスチナこどものキャンペーンの職員はそれを見て、思わず目を細めた。「結果的に入居者がコミュニケーションを図れる場になり、とても良かった」

抽選でここに入居が決まった1800世帯の人たちは、別々の集落から来た知らない者同士。お互いに打ち解けるまで時間がかかる。そのため仮設住宅でのイベントは、コミュニティを作ることが主な目的となりつつあり、単なる炊き出しはお断りという自治体もある。

この日は炊き出しと合わせてマッサージ、ビデオ上映、子どものお絵かきなどが行われ、年代を問わず入居者が一カ所に集まった。定期的な被災地訪問を続ける龍岡会の大森順方理事長は、「入居者みなが楽しめるイベントを行うことが大切」と話す。12月にも被災地を訪れ、餅つきなどをしながら仮設住宅の入居者同士の交流を深める予定だ。

被災地の仮設住宅の多くでは、一人暮らしのお年寄りなどが孤独にならないような取り組みが必要とされている。パレスチナ子どものキャンペーンの田中好子事務局長は「集会所などを使って、女性向けにはビーズや手芸を楽しめるような催し、男性向けには囲碁や将棋を用意している」という。

避難所から仮設住宅に移ったことで、被災者はプライバシーを保てるようになった。今後は、いかにして入居者同士の交流を深めながら心の隙間を埋めていくかが課題だ。(形山昌由)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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