
WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)が、11月18日に「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案」を発表した。
2050年には、原発にも化石燃料にも頼らず、再生可能な自然エネルギーだけで日本全体を賄おうという提案だ。
WWFインターナショナルは今年2月、世界全体で2050年までに自然エネルギー100%は実現可能と発表した。それを受けて、WWFジャパンは研究機関や専門家らと日本国内の自然エネルギーについて議論を重ねてきた。
そして今回、省エネ技術の進展などで2050年に2008年の約半分までエネルギー需要を減らせれば、自然エネルギーで十分に供給できると結論付けた。
WWFジャパン気候変動・エネルギーグループの山岸尚之リーダーは「原発事故を経験した日本が大胆な思考をしない怠慢は許されないと考えた」と、野心的なビジョンを追求した背景を語る。
同シナリオでは自然エネルギーとして、水力、太陽(光と熱)、風力、地熱、バイオマスを取り上げた。燃料や熱のエネルギー需要は電力の約2倍。
そのため、太陽熱やバイオマスの熱利用を大幅に伸ばすこと、燃料になる水素を自然エネルギーで取り出すことを想定した。原子力発電所については段階的に廃炉にして、遅くとも2040年までに全廃にすると仮定した。
発表会では、研究を実施したシステム技術研究所の槌屋治紀所長がシナリオの概要を解説。続いて環境エネルギー政策研究所の松原弘直・主席研究員が、2009年度末に3.4%の自然エネルギーを100%まで伸ばすために必要な社会の変化などをまとめた。
1時間以上に及んだ活発な質疑応答では、「空理空論では」といった否定的な意見も出た。それに対して槌屋氏は「過去にもハイブリッドカーやLED(発光ダイオード)の普及を予想し、『できっこない』と言われても実現するのを見てきた」と自信をのぞかせた。
自然エネルギー普及のカギを握る「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、2012年7月に始まる。政府が「エネルギー基本計画」の見直しを進める今、WWFジャパンは前向きなビジョンを政策に反映させるため、賛同署名を集めている。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)