「お母さんにやさしい国ランキング」1 位はノルウェー、最下位はニジェール――日本は30 位、「産休の充実」と「男女格差縮小」が課題

ニジェールでは約300 万人の子どもたちが飢餓に直面し、生後3カ月のサヒナトウちゃん(写真)も重度の栄養不足に陥っている (c)Nyani Quarmyne/Save the Children

英国発祥で子ども支援を行う国際NGO セーブ・ザ・チルドレンは5 月8 日、「母の日レポート2012」を発刊した。そのなかで、保健、栄養、教育、政策決定への参加など、世界165 カ国の母親を取り巻く状況を総合的に考察し、順位付けした「母親指標」を発表。今年で13回目となるが、1 位はノルウェー、最下位はニジェール、日本は30 位だった。

母親指標は、女性指標と子ども指標のデータをもとに順位が出されている。例年同様、母親指標の上位には先進国、下位にはサハラ以南アフリカを中心とする開発途上国がランクインする傾向にあるという。

■ ノルウェー、産休取得中の給与支給額100%

昨年から2 つ順位を下げた日本は、1 位のノルウェーと女性指標で大きく差がついた。特に働く母親へのサポート体制の違いが要因となっている。ノルウェーでは産休が最大46 週間まで取得できるのに対し、日本は14 週間しか取得できないほか、産休取得中の給与支給額においてはノルウェーが最大100%なのに対し、日本は67%である。

女性の国会議員の割合についても、ノルウェーは約4 割なのに対し、日本はノルウェーの約3 分の1 に達しない。

一方、子ども指標では、日本は5 歳未満の子どもの死亡率の低さ、義務教育への就学率の高さで3 位にランクインしている。日本の母親指標を向上させるには、産休制度の充実や政治参加における男女格差の縮小がカギとなる。

■ ニジェール、妊産婦の死亡率が16人に1人

最下位のニジェールは、開発途上国の中でも出産時に医療従事者の立会いが行われることが少なく、妊産婦の死亡率が極めて高い。また、5 歳未満の乳幼児の栄養不良率、死亡率ともに高く、母子保健の整備が喫緊の課題であることがうかがえる。

最上位国のノルウェーと比較すると、妊産婦の死亡率がノルウェーは7600 人に1 人であるのに対し、ニジェールでは16 人に1 人。5 歳未満の乳幼児死亡率は、1000人あたりノルウェーでは3 人だが、ニジェールでは143 人で、過酷な事実が浮き彫りになっている。

今年の母の日レポートでは、乳幼児の死亡原因と大きく関係している「栄養不良」問題を主要テーマとし、その対策として、「生命を助ける6 つの方策」を提唱している。

これは、1)鉄・葉酸の摂取、2)ビタミンA の摂取、3)亜鉛の摂取、4)生後6 カ月間の完全母乳、5)6-23 カ月期の補完栄養食の摂取、6)石鹸による手洗いや安全な水の使用で、この包括的パッケージは1 人当たりわずか20 ドルで実施することが可能だという。

これらの保健サービスをはじめ、母乳育児の推進や抗生物質の投与などを行うコミュニティ・ヘルスワーカーも現在世界では100 万人以上不足し、途上国の子どもと母親を守る取り組みが急がれる。(オルタナ編集部=吉田広子)

■ 2012 年母親指標ランキング 母親になるのに最も適した国

<トップ10 位の国>
1位 ノルウェー
2位 アイスランド
3位 スウェーデン
4位 ニュージーランド
5位 デンマーク
6位 フィンランド
7位 オーストラリア
8位 ベルギー
9位 アイルランド
10位 オランダ/イギリス

<ワースト10 位の国>
156位 コンゴ民主共和国
157位 南スーダン
158位 スーダン
159位 チャド
160位 エリトリア
161位 マリ
162位 ギニアビサウ共和国
163位 イエメン
164位 アフガニスタン
165位 ニジェール

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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