記事のポイント
- 世界の森林のCO2吸収量が、過去20年で4分の1まで減った
- 2023年や2024年に発生した大規模な山火事が最大の要因だ
- CO2吸収源だった森林は今、自らCO2を排出する存在になりつつある
世界の森林のCO2吸収量が過去20年で4分の1まで減ったことが、世界資源研究所(WRI)の分析で明らかになった。最大の要因は、2023年と2024年に発生した大規模な山火事だ。森林によるCO2吸収機能が弱まれば、CO2排出量の削減にはさらなる努力が必要になる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子、編集協力=植松美海)

森林をはじめとする植物は、人類が化石燃料の燃焼で排出するCO2の約3割を吸収していると言われる。
しかし、世界資源研究所(WRI)は7月24日、同研究所が開発・提供するグローバル・フォレスト・ウォッチのデータを分析した結果、森林によるCO2吸収量が約20年前に比べて4分の1にまで減少したことを明らかにした。
グローバル・フォレスト・ウォッチは、森林の状況をほぼリアルタイムでモニタリングできるオンラインプラットフォームだ。
■森林火災がCO2吸収能力低下の最大要因に
吸収量低下の最大の要因は、2023年と2024年に世界各地で発生した森林火災だ。
2023年は特にカナダで記録的な山火事が発生した。その焼失面積は、日本の面積の3分の1を上回る。2024年は特にブラジルで大規模な森林火災が発生した。その焼失面積はイタリアの面積(日本の約5分の4)を超えたという。
森林のCO2吸収能力は、2016年と2017年にも大幅に低下したが、その時の最大の要因は、農地転用を目的とした森林伐採が増えたことだった。
今回は初めて、吸収能力低下の最大要因が森林火災になった。
「木々と森林は、気候変動の緩和のために、大気からのCO2の除去を無償で行ってくれている。その機能を失うと、私たちはより一層、排出量削減のための努力をしなければならない」と、グローバル・フォレスト・ウォッチのナンシー・ハリス研究ディレクターは米紙にコメントした。
「CO2吸収源としての森林が、地球温暖化により、自らCO2を排出する存在になりつつある」との懸念を表明した。
■2025年も世界各地で森林火災が相次ぐ
2025年は1月に米ロサンゼルスで大規模な山火事が発生し、日本でも2月から3月にかけて、岩手県、愛媛県、岡山県などで相次いで山火事が発生した。
ほかにも、欧州、韓国、カナダで大規模な山火事が発生している。7月下旬には、気温50℃超を記録したトルコで、猛暑による大規模な山火事が今も発生している。
ハリス氏は、「2025年も、過去2年の傾向から遠くないだろう」と指摘する。
米国科学アカデミー紀要が7月21日に発表した研究「2023年と2024年に発生した前例のない規模の森林火災による世界的な森林破壊」は、気候変動が、森林火災の発生をより頻繁にし、かつ、激甚化させているという。
「これらの極端な気候の現象は、森林が本来の役割を果たすことを困難にしている」とハリス氏は懸念を示した。
参考記事:森林が温室効果ガスの発生源に、酷暑では光合成できない
■森林が吸収源から排出源に転換した地域も
■「温暖化が温暖化を助長するステージに」
■森林エコシステムの「再生」が重要に