森林が温室効果ガスの発生源に、酷暑では光合成できない

記事のポイント


  1. 暑い夏は植物の成長を促し、CO2吸収量も増えるはずという声がある
  2. しかしある研究によると、酷暑では光合成できず成長が止まるという
  3. 高温化の森林ではCO2の吸収量が減り排出量は増えるという予測も

今年も酷暑が続く。地球温暖化どころか「地球沸騰化」だと言われ始めた。ただ、それは植物の成長には有利なのではないか、という声がある。たしかに植物の成長には気温が大きな影響を及ぼす。だから気温が上がれば木はよく茂り、森は面積を増やすのではないか。農作物の稔りも増えるだろう。きっとCO2の吸収量も増えるはずだ。(森林ジャーナリスト=田中 淳夫)

ところが、次のような論文を見つけた。「モデル化された炭素動態に基づく気候変動がスギ人工林の純一次生産に与える影響の空間的変動の推定」(原文は英語)。人工林の44%を占めるスギ林の気候変動下における成長を推定したものだ。

さまざまなモデルでスギの成長力を推定すると、いずれも成長力鈍化を示したのである。暖冬でわずかに成長量は増えるが、夏の高温と日射が強すぎると、光合成はストップするらしい。

葉内の化学反応が進まないからだ。結果的に成長量は落ちてしまう。とくに南西日本のスギに顕著という結果が出た。

実はヨーロッパでも同じような研究が行われていて、主要林業樹種のトウヒの成長量が2割ほど落ちるとされている。気温が上がると乾燥が進み、成長を阻害するのだという。

地球規模で木材成長量が低下すれば、世界中の林業界は混乱するだろう。木材供給量を減らすか伐採面積を増やすか。木材価格も乱高下しそうだ。

別の研究では、気候変動で大雨や強風が増えるほか、山火事の頻発と害虫の発生が増える恐れを指摘している。いずれも森林にダメージを与える要素だ。

■温暖化は植物によいのか

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田中 淳夫(森林ジャーナリスト)

森林ジャーナリスト。1959年生まれ。主に森林・林業・山村をテーマに執筆活動を続ける。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)『鹿と日本人』(築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(ともに新泉社)『獣害列島』(イースト新書)などがある。

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キーワード: #森林

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