■雑誌オルタナ82号:エゴからエコへ(82)
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(C)花巻観光協会
早池峰神楽は、岩手県花巻市大迫町の早池峰山周辺に伝わる神楽で、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。山岳信仰や修験道、さらには稲作を中心とした農耕儀礼と結びついた神楽で、大償神楽と岳神楽という二つの神楽が競い合うようにして、五百年ものあいだ受け継がれてきた。
私は岳神楽のファンだ。もう十年近く通っている。岳神楽はどこか男性的で、歯切れがいい。この地方には権現信仰が残っていて、各家に権現様が祀られている。祭りの時はそれらの権現様が集まって行列する。一度しっぽを持たせてもらったことがあり、まるで宮沢賢治の童話の一場面に入り込んだような気分になった。
観光客も多い。特にカメラを抱えたアマチュア映像家が目立つ。ある年、 祭りのクライマックスである森の中の権現舞を前に、カメラマン同士がもめ、 ついに一人が石を投げた。