淡水保全を中心とした「水リスク対応」を事業成長の機会に

記事のポイント


  1. 脱炭素と並ぶ取り組みとして、ネイチャーポジティブの推進が重要に
  2. なかでも淡水の保全を中心とした「水リスク」への対応は喫緊の課題
  3. 水の保全活動を自社の事業成長の機会につなげられるかが問われる

■オルタナ83号(2025年12月発売号)特集「サステナメガトレンド2026」から転載

2026年からは脱炭素と並ぶ取り組みの柱として、ネイチャーポジティブの推進がこれまで以上に重要になる。なかでも喫緊の課題が「水リスク」への対応だ。特に、淡水については2030年までに需要が供給量を40%上回るとする予測もある。企業は淡水の保全にスピード感を持って対応するとともに、保全活動をいかにして自社の成長の機会につなげるかが問われる。 (オルタナ副編集長・長濱慎)

■脱炭素とネイチャーポジティブは密接に関係

2025 年11月22日(日本時間) に閉幕したCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)は「森林COP」とも呼ばれた。

ブラジルの熱帯雨林地帯・ベレンで開催し、国際熱帯林保護基金(TFFF)の設立などこれまで以上に「自然」にフォーカスした会議だった。
 
TFFFは各国政府からの公的資金を呼び水に民間資金を引き込み、1250億米ドル(約19兆円)の基金創設を目指す。回復した面積に応じて対価を支払うなど、森林の保全が経済的メリットにつながる道筋を付けた。

こうした動きが顕著なのは、ネイチャーポジティブ(自然の損失を食い止め回復・反転させること)が気候変動対策のカギを握るからだ。ネットゼロの達成には再エネの普及といった脱炭素施策とともに、天然の炭素吸収源である森林や海洋の回復が欠かせない。

環境省は25年7月、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ」を公表。自然と経済の両立に向けた方向性を示した。

同省によると、24年と25年の会計年度においてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の開示を表明したのは世界で562社。うち最多の154社を日本企業が占めた。

「自然資本」とも呼ばれる通り、今や自然を守ることはコストではなく企業価値向上の機会という視点を持つことが大切だ。

温室効果ガス削減量のように明確な指標がある脱炭素施策に比べると、自然保護は何から取り掛かって良いかわからないという声もある。そこで一つの柱にしたいのが「水リスク」、特に淡水に関する対応だ。

地球表面積の7割を水が占めるが、その多くが海水で淡水は2.5%。そこから氷河などを除くと、人類が利用できる状態の水は地球全体の0.01%に過ぎない。

■サントリーは水源保全活動から新事業を創出

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #生物多様性

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