法務省は、2017年1―6月期に日本で難民認定を申請した外国人が前年同期の1.7倍、8561人に上ったことを明らかにした。一方で、同期の難民認定数は3人にとどまっている。こうしたなか、ゴールドマン・サックス証券法務部員は専門スキルを生かしたボランティア「プロボノ」で難民申請手続きの支援を行い、4件中3件で難民認定を受けた。世界の難民・避難民は6560万人に上り、深刻化するなかで、企業は無力なのだろうか。(オルタナ副編集長=吉田広子)
2017年6月1日夜、六本木ヒルズ(東京・港)。ビジネスアワーが終わり、オフィスの照明が落ちていくなかで、23階の法律事務所には煌々と灯りがついていた。室内には、日本人や外国人合わせて80人ほどが集まり、英語でのパネルディスカッションに参加していた。
「なぜ日本では難民の受け入れが進まないのか」
「私たち専門家は何ができるか」
参加者のほとんどが弁護士や司法書士など法律実務家。ディスカッションを主催したのは、今年2月に設立したネットワーク「Women in Law Japan」だ。
この夜は、ゴールドマン・サックス証券(GS)法務部員2人も登壇した。同社は2015年2月、認定NPO法人難民支援協会(JAR/東京・新宿)と外部法律事務所と連携し、難民申請手続きへのサポートを始めた。社員たちが無償でサポートする「プロボノ」方式だ。

GS法務部の藤田直介部長(弁護士)は、「遠い国から一人で日本に来て、難民申請を行っている」と聞いて、「難民とはどういう人なのだろう。母国で辛い思いをしてトラウマがあるのではないか。怯えさせてしまわないだろうか」と案じていた。
だが、最初に会ったパキスタン人男性は笑顔であいさつしてきた。「支援は心強い。本当にありがとう」と深く感謝された。
具体的な難民申請支援は次の通りだ。まず、申請者にインタビューし、難民であることを法的に分析し、本人の陳述書や弁護士としての意見書を作成する。特に、「いつ、どこで、どんな」状況にあったか、その場にはだれがいたのか―─など、本人のあいまいな記憶を、法的な証拠として確かなものにしていく。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や国際人権NGOらが発行する報告書などを参考にし、いかに迫害を受ける恐れがあるか、客観的な事実を積み重ねる。GS法務部は、案件によって他部の社員ともチームを編成。これまでに4件手掛け、すでに3件は難民認定を受けることができた(2017年6月時点)。
■法律家のプロボノは米国では当たり前