長野県はこのほど、地球温暖化対策への取り組みを表明する「気候非常事態宣言」(CED)を行った。CEDは世界で1200以上の自治体に広がり、国内では今年9月の長崎県壱岐市を皮切りに長野県が4例目、都道府県としては全国で初めてだ。阿部守一長野県知事に決意と思いを聞いた。(エイブルデザイン・渡辺勉=CSRエキスパート、自然エネルギー信州ネット理事・平島安人)

長野県がこのほど発表したCED宣言と新方針は、2050年までのCO2排出量の実質ゼロや再生可能エネルギーの普及拡大、エネルギー自律分散型の地域づくりなどを盛り込んだ。
■マータイさんの「カーボンジャスティス」引き継ぐ
――今回11月の県議会定例会での「気候非常事態に関する決議」を受けて、宣言を出しましたね。
阿部知事:自民党から共産党、無所属、会派に属していない人たちも含め全会一致の決議で、これは画期的だと思っています。壱岐市など他の自治体でも全会一致ですが、都道府県レベルでは初めてです。
――長野県は「1村1自然エネルギープロジェクト」をはじめ環境に関して様々な取り組みを展開し、軽井沢町で行われたG20環境・エネルギー関係閣僚会合(2019年6月15~16日)では「長野宣言」を出しました。知事はどのような道筋のなかで、こうした取り組みを進めてきたのですか。
阿部知事:地球温暖化問題に最初に取り組んだのは、2007年~2009年にかけて横浜市の副市長だった時です。今も横浜は先進的な取り組みをしていますが、私は当時の地球温暖化対策行動推進本部を担当し、部局横断的な取り組みを進めました。
そのころ、横浜でアフリカ開発会議「TICAD4」がありました。その会議で、ノーベル平和賞を受賞したケニア出身の女性環境保護活動家、故ワンガリ・マータイさんが「カーボンジャスティス」について強く主張されていました。
気候変動の問題でアフリカは、洪水や干ばつによる食糧危機や、それが引き金となった地域紛争など、非常に大きな影響を受けています。マータイさんだけでなくアフリカ各国首脳も、そう主張していました。「先進国が温室効果ガスを排出し続けている負の影響を、我々がもっとも被っている」と、多くの人たちが憤っていました。
私はその時、強く心を動かされました。我々はほとんど意識もせず普通の生活をしているが、その感覚で本当にいいのだろうか。そうした問題意識は心に大きなインパクトを与えました。ワンガリ・マータイさんが「カーボンジャスティス」と叫んでいた声が、今でも頭の中に残っています。
■G20「長野宣言」で気候変動対策への決意を表明