インテリア雑貨を製造・販売するアンバーアワー(千葉県松戸市)は、ケニアのマチャコスという農村地域に工房を設けている。現地の女性たちが作るのは、200種類にわたる色とりどりの「収納かご」だ。これに同社は「ORIKAGO」というブランドを付けて、主力商品として展開している。同社代表の岡本ひかる氏は、「作り手に誰もが努力できる機会を提供する」という理念を掲げる。岡本氏に事業を立ち上げた経緯と商品のこだわりを聞いた。(オルタナ編集部・松田ゆきの)
身近な植物「サイザル」を原料にかご作り
アンバーアワー代表の岡本氏は2014年、アフリカの農村部の女性たちの雇用を生み出すことを目指し、同社を立ち上げた。きっかけは2012年から2年間、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊としてアフリカ・ガーナの農村部で活動したことだ。岡本氏は当時、都市から離れるほど女性が働く機会が少ない現状を目の当たりにし、アフリカ農村部に住む女性の雇用について考えるようになった。

アフリカの農村部は天候や季節などに左右されるので農業従事者の収入が安定していない上、男性が農村のリーダーを務めることがほとんどだった。
岡本ひかるアンバーアワー代表
農村に住む女性は頑張って働いても安定的な収入を得にくかったが、女性たちの多くは子どもの教育や生活のために働くことを望んでいた。そこで岡本氏は女性たちに就労の機会を提供するために、日本でアンバーアワーを立ち上げ、ケニアのマチャコスという農村地域に工房を設けた。
岡本氏が就労の機会をつくる上で大切にしてきたのは、「誰でも参加できる」ことだ。練習さえすれば特殊な技能が無くても作れるものとして、ケニアの伝統工芸品であるサイザルかごに目をつけた。「サイザル」はケニアの農村部に住む人にとって身近な植物だ。幼少期からサイザルで作った糸で遊び、サイザルでかごやバッグを作るので、女性たちはサイザル細工を得意としていた。

一方で、身近にあるものだからこそ、製品の品質を高めることに苦労を要した。岡本氏は、現地のスタッフ8人に研修を行って商品の品質基準を共有している。その8人が村に住む作り手およそ250人に岡本氏の考えを代弁し、制作を指導するのだ。