
中部電力は29日、九州電力の「やらせメール」問題を受けた社内調査の結果を公表し、2007年にあった浜岡原発4号機のプルサーマル計画に関するシンポジウムで、住民に反対以外の発言をさせるよう、主催者の経済産業省原子力安全・保安院から口頭で依頼を受けていたことを明らかにした。実際の会場で発言はなかったというが、国が電力会社を通じて住民意見をねつ造しようとする姑息な手口がまた一つ浮き彫りになった。
調査は経産省の指示に従い、中電社内で関係者49人からの聞き取りや、原子力部門在籍者ら970人と関連企業33社へのアンケートなどを元に行われ、29日に報告された。
問題のシンポジウムは浜岡原発の地元、静岡県御前崎市の市民会館で2007年8月26日に開かれ、プルサーマル計画について国からの説明や有識者によるパネルディスカッション、参加者との質疑応答などがあった。募集定員600人に対して524人が出席した。
報告書によると、開催1カ月前の7月下旬に保安院から中電本店原子力部グループ長に、参加者の動員と質問作成の依頼があった。これを受けて同グループ長は地元住民を想定して原発に肯定的な発言の文案を作成したが、社内で「コンプライアンス上問題がある」として却下された。シンポジウム当日は同社関係者の発言や、作成した文案に類似する質問がなかったことから、実際の「やらせ」はなかったとしている。
保安院側は29日午前の会見で「まだ報告書を見ていない」などとコメントした。(関口威人)