生活クラブが酪農家へ緊急寄付、酪農家がホンネを語った

記事のポイント


  1. 生活クラブが提携している酪農組合へ緊急寄付を行った
  2. 地域差はあるが飼料の自給化に取り組む酪農家も多い
  3. 生産者と消費者が共創する「地域酪農」を推奨した

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(東京・新宿)はこのほど、酪農家が危機的状況であることを受け、提携している3つの酪農組合に緊急支援として総額5348万1千円を寄付した。輸入飼料に依存することへの懸念し、乳牛の飼料を自ら作る酪農家も増えてきた。持続可能な酪農には、生産者と消費者が共創する循環型プラットフォームがつくれるかどうかが鍵となる。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

生活クラブは45年前に自ら牛乳工場を建て、提携する酪農家とともに牛乳を生産してきた。今回の緊急寄付は提携する3つの酪農家から支援要請があったのがきっかけだ。

近年のグローバル化やウクライナ戦争、新型コロナウイルス感染症拡大は、輸入飼料の高騰や生乳の需要の低下を招き、酪農家を苦しめている。

中央酪農会議によると、日本の酪農家の85%が赤字経営だ。86%が借入金を抱えており、6軒に1軒はその額が1億円以上に上るという。

サステナX

フォーラムに出席した南信酪農業協同組合の三村誠一組合長は、「現時点で4億円もの負債を背負っている。100頭以上の乳牛を飼っていても、家族4人がやっと食べていける状態だ」と赤裸々に話した。

今回のフォーラムで、生活クラブは南信酪農業協同組合を含む、3つの酪農組合に総額5348万1千円を寄付した。

酪農を中心とした循環を生み出す

南信酪農業協同組合がある長野県では、輸入飼料への依存を懸念し、自ら耕作を手がける酪農家が多いという。農業をリタイアした人から農地を引き取るなど、耕作放棄地の利用も盛んだ。

一方で、耕作地が少ない土地では輸入飼料に頼らざるを得ない状況が続いている。

ミルクの新たな価値を考える、ミルク一万年の会代表世話人の前田浩史氏は、酪農を中心とした地域循環型のプラットフォームづくりの必要性についてこう主張した。

「規格外で出荷できない野菜や藁、食品廃棄物を畜産酪農業に供給し、畜産酪農業で出た糞尿を堆肥として耕種農業へ供給する。この循環を構築することで、畜産酪農の輸入飼料への依存を軽減し、有機農業への移行を促すことも可能になる」

現在の問題点は「誰が」この循環プラットフォームを構築するかだ。前田氏は、生活クラブなど「生協」の役割に期待を示した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #サステナビリティ

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