記事のポイント
- NTTコムや日建設計が脱炭素へ社員の行動変容を促すアプリを開発した
- NTTコムではアプリの利用した社員の約7割の行動が変容した
- 日建設計は30年GHG排出量を13年比4割減へ設備効率化と行動変容で実現へ
NTTコミュニケーションズや日建設計がオフィスの脱炭素化に向けて、ワーカーの行動変容を促すアプリを開発した。NTTコムが開発したアプリでは、1カ月の実証実験で2000人以上の社員が参加。参加した社員の7割が空調を切るなど省エネ行動を実践するなど、行動の変容がみられた。日建設計が開発したアプリでは、位置情報を利用して、社員に脱炭素につながる行動を推奨する。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

■1カ月で約8割の参加者の環境意識向上
脱炭素に向けてアプリで社員の行動変容を促す取り組みが増えている。
NTTコムが展開する「グリーンプログラム for Employee」では、利用者は空調を切るなどの環境に配慮した行動や日々の食事などを記録することで、CO2排出量を測定することができる。アプリ内のアンケートで自分の普段の排出量を知ることができたり、クイズなどを通じて学ぶこともできる。
同社では昨年11月に社内で実証実験を実施。「1カ月間で約2500人に参加していただき、20t超のCO2削減を達席できた」(広報部)と話す。アプリの利用を通じて「約8割の社員の環境意識が向上、約7割の行動変容を促進した」と成果を明かす。
同アプリでは、自身の行動を手入力で記録する。この狙いについて「環境への行動を意識して行っていただくには、意識して登録することが重要だと考えている」と明かす。ただ入力漏れなどもあるため、「入力の簡素化や自動データの取得など、改善に向けた検討も進めている」とのことだ。
■GHG排出量を30年に13年比40%減へ行動変容がカギ握る
日建設計では社員に行動変容を促すため、アプリ「Asapp(アサップ)」を開発した。3月から同社東京オフィスで運用する。
「アサップ」は社員がオフィス内でのCO2排出量を可視化し、環境行動によってどれくらい削減したかを測定することができる。社員一人ひとりのオフィス滞在時や、通勤時の移動手段などのCO2排出量を確認することができる。
脱炭素に向けた行動も促す機能も搭載する。オフィス内では、センサーで人の多寡を測定し、在席人数の少ないエリアで仕事をしている人がいれば、人数の多い場所へ移動することを促す。移動して無人となったエリアは照明・空調を消すことで排出量を減らす。
アプリの提案に応じて、CO2削減に貢献するとポイントが付与される。このポイントは社内のカフェなどで利用することができる。
同社は2021年に気候非常事態宣言を出した。そのなかで2050年に企業活動に起因するGHG排出量ゼロを目指す。
50年ゼロに向けて、同社東京オフィスでは2030年40%削減(13年比)を目指す。設備機器の効率化などを進めるが、それだけでは削減量は31.3%にとどまる。目標達成に向けては社員の行動変容がカギを握る。
アプリを運用し始めて効果も出ている。同社デジタルソリューションラボコンサルタントの大浦理路さんは「アンケートをとると4割ほどの社員が『環境に対する意識が促進された』と答えた」と話す。今後は機能の拡張なども行っていく予定だ。