TPP協定で薬が入手困難に、脅かされるアジアの公衆衛生

TPP交渉には現在、アジア太平洋地域11カ国が参加し、非公開で進められている。しかし、MSFが入手した漏えい文書によると、米国が途上国も対象になる貿易協定案で最も攻撃的な知的財産関連条項を提案しているという。

TPP条項案の1つは、治療効果の向上にかかわらず、既存の薬剤の新しい形態・用法・製法といった改変に20年の特許期間を承認するよう各国に求めるものだ。

不当・不適切な特許への異議申し立てに要する費用や手間を増やすような条項案や、行政処理で費やされる時間を補てんするための特許期間延長の条項案もある。こうした条項案は、薬価を高止まりさせ、薬剤入手を困難にする。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、一般的に開発費用が安く抑えられることから、新薬に比べて薬価が安い。開発途上国では、安価なジェネリック医薬品が広く普及している。MSFの医療活動でも、HIV治療の場合、途上国の活動で使用されている薬の80パーセント以上をジェネリック薬が占めている。

MSFインターナショナル会長ウンニ・カルナカラ医師は「必要な薬が高価すぎるとか、手に入らないという理由で、本来助かるはずの命があまりにも多く失われている。途上国での薬の普及流通にとって、一層の障壁になりうるTPP協定を支持することはできない」と話す。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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