
国際的な算数学力調査において、シンガポールの小学生が常に世界トップランクの成績を収めていることをご存知だろうか。その秘密は独自の算数カリキュラムにある。主な特徴は、文章題に重きを置いている点、そして問題を解く際にできる限り「バーモデル」を使う点だ。
バーモデルは、未知数を使わずに方程式レベルの問題を解くことのできる、シンガポール生まれの解法だ。まず文章題の中で基準となる数がどれなのかを見極め、1ユニットと位置付ける。それを基に要点を視覚化した棒状の図を描き、立式・解答を導き出すメソッドである。
例えば、「ナディアはリトヴィックより2個多くイチゴを食べました。2人あわせて12個食べたとすると、リトヴィックが食べた個数は?」という文章題を解く場合、シンガポールの小学1年生はまずこのようなバーモデルを描く(図参照)。
1ユニットはリトヴィックが食べた個数となり、ナディアは1ユニット+2個となる。従って、2ユニットは12-2=10個となり、1ユニットは5個、つまりリトヴィックが食べた個数は5個と分かる仕組みだ。
このようなバーモデル問題を中心に、数字数理、時間経過など日本の小学生が苦手とするジャンルの問題をシンガポールの教科書をベースに書き下ろした『世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル』(平凡社)が刊行された。現地の初等教育に関するエッセイも掲載されているので、親子で共有できるドリルである。
現地の小学校に通う息子を持つ著者・田嶋麻里江さんは、ごくごく普通の母親。かつて本人が日本で学習した算数とは全く違う解法で、難易度の高い文章題を難なく解いていく児童たちの姿にショックを受け、筆を取ったという。
すでに、アメリカを筆頭にカナダやアジア各国もシンガポール式算数の教科書を授業に取り入れている。世界の小学生たちがどんな問題を解いているのか、ぜひ親子で挑戦してみてほしい。大人の脳ドリルとしてもお薦めだ。(オルタナ編集部)
◆『世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル』(平凡社)
在外ジャーナリスト協会(Global Press)会員 田嶋麻里江著
定価980円+税