経済産業省は12月、「エネルギー基本計画」の原案に「原発を重要電源」と明記した。一方で環境省による調査では、風力だけで日本の電力使用量を上回る膨大なポテンシャルがあるとされている。「その資源を活かさない手はない」と語るのは、風力エネルギー研究の草分けで、数々の風車事業に携わる足利工業大学の牛山泉学長だ。(聞き手・ノンフィクションライター=高橋真樹)
■出力調整に揚水発電を
――風力発電はポテンシャルが高いとされる一方で、不安定性などが指摘されています。本当に国の基幹電源になりうるのでしょうか。
牛山:十分可能です。それができていない理由は、日本の送電網の弱さに原因があります。
現在は各地域の電力会社が独占的にエネルギー供給をしていて、地域間で電力をやりとりしていません。風力発電のポテンシャルが高いのは北海道ですが、北海道から本州に電力を送れないので、その力を活かせない。
地域間の連系線を太くしたり、風車の適地に送電網を配備することで、各地の電力をカバーできます。
また、風車の電力は不安定ではないかと言われます。
しかしすでに国の20%以上の電力を風車でまかなっているデンマークは、2050年に60%に上げる予定にしています。変動の大きさをどう調整するかというと、隣国のノルウェーは電力をほとんど水力でまかなっているので、風力が足りない時はノルウェーと電気を融通するのです。
日本は隣国と融通していませんが、揚水発電所があります。出力をニーズに合わせて調整することのできない原発をカバーするためにつくられているので全国にあります。
原発が動かせなくなった後は、風力とセットで使えばいい。電気が余るときは水を汲み上げて、足りない時は放水する。これで出力調整ができます。