■ 歴史を後世につむぐ「道普請」のスタート
加えて2009年には、「参詣道環境保全活動」という名目での「道普請」をスタートさせている。高野山町石道や熊野古道などの世界遺産に登録されている参詣道のうち、荒れてきた場所に新たな土を入れて突き固める作業だ。
土は車で運べるところまで運び、そこから先は活動の参加者に運んでもらう。言わば地域の人々が行ってきた参詣道を守る営みを追体験する作業だ。
和歌山県では企業のCSR活動やボランティア活動の一環として、この道普請に参加する団体を募り続けてきた。参加には交通費や土の代金、傷害保険料などが必要だが、比較的少額の出費で参加できるためか、毎年約30~50団体、延べ人数で約1万9250人が参加(2014年1月現在)する活動に育ってきたという。
参加企業の一つである明治安田生命保険相互会社の近畿公法人部は、「お客さまを大切にする会社」の実現に向けて展開しているMOT運動という小集団活動の一環として参加し始めた。
自発的な活動のため自費での参加となるが、持ち寄った洋服や雑貨をフリーマーケットで販売するなど、独自の方法で参加費用を集めている。道普請の参加者は、言わば費用捻出に関わった人たちの代表として参加する形だ。
参加者からは「和歌山県に対する親近感や、職場の一体感が高まった」や、「道普請が恒例行事になり、規模も拡大しているのは私たちも楽しみながら実施しているから。これからも続けていきたい」といった声が聞かれるという。