個人の残業削減努力、7割の企業が評価対象にせず

長時間労働はWLB実現にとって大きな課題
長時間労働はWLB実現にとって大きな課題

内閣府は5月13日、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する個人・企業調査」の結果を発表した。WLBの実現には残業時間の削減が求められるが、74%の企業では「定められた時間内で仕事を終えて帰宅すること」を人事評価で考慮していないことが分かった。いまだ「残業=頑張っている」とみなす傾向が強く、残業時間を減らす動機が少ないのが現状だ。(オルタナ編集部=佐藤理来)

本調査は個人調査3つと企業調査1つの計4調査からなる。残業に関する回答が含まれるのは、3154人の労働者が回答した個人調査と、従業員規模100~999人の企業1016社が対象の企業調査だ。

「残業や休日出勤をほとんどせず、時間内に仕事を終えて帰宅すること」に対するプラスの人事評価は16.3%、マイナスが6.2%、考慮していないが74%だった。また、「役割を果たしたうえで有給のほとんどを消化すること」についても84.5%が考慮していないとした。

長時間労働を奨励しているわけではないものの、残業をせずに仕事を終わらせても評価対象にはなっていないことが判明した。

自分の上司が残業に対してどのようなイメージを持っているかを調査したところ、労働者(労働時間1日10時間未満を対象)は、「頑張っている人だとみなされる」と考える人が最も多く38.4%、「責任感が強い人と判断される」と考える人が30.4%に上った。

一方、「仕事が遅いと判断される」と考える人も37.1%いた。1日の労働時間が長い労働者ほど、残業をポジティブにとらえる傾向が強く、逆に労働時間が短い人ほど残業に対してネガティブなイメージを持つことも分かった。

残業削減に効果的な方法として、労働者の27%が「短時間で質の高い仕事をすることを評価される」が有効だと考えているが、実際には4.2%しか実施されていない。「担当者が不在でも他の人が仕事を代替できる体制づくり」も24.6%が効果的だと考えているが、実施は5.9%にとどまる。取り組み自体を行っていないという企業も10.5%あった。

有給取得率の高い(70%以上)の企業で優位に取り組まれている促進方法には、身近な上司からの取得奨励(26.6%)や上司自身の積極的取得(20.3%)が挙げられた。積極的に休暇を取らせる仕組みづくりも35.4%と多く、制度や雰囲気の面からの動機づけが有効になると示唆された。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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