シリア邦人拘束事件、日本の市民がネットで「にわか交渉」

キリス国境のシリア側から見た光景

キリス国境のシリア側から見た風景(写真・川畑嘉文)

それにより紛争の一場面が一般の市民に伝わるようになった。しかし、これらの情報は実態が見えづらく、まるでバーチャルの世界であるかのように錯覚することもある。現場の緊迫感や緊張感までは体験することができない。

だから、イスラム国が掲載した湯川さん拘束の犯行声明に対しても、一部の市民はそれほどの衝撃を受けなかった。今回のように暴走し書き込みをした中にはそういった人々もいただろう。

そもそも、どれだけ真摯に、そして誠意を込めて解放を訴えたのか。また、それにより湯川さんを不利な状況へ追い込む可能性があることを想像できなかったのだろうか。

ネット上には湯川さんを笑いものにし、罵る心ない投稿も多く見られる。どのような経緯があろうと彼は被害者で、今この瞬間も死の恐怖と戦っている。そして、それを心配する家族がいる。ネット上には余りにも無責任で無神経な感覚が蔓延している。軽い気持ちで付き合える社会だと勘違いしているのだ。

インターネットの普及でグローバル化が急激に進み世界は身近なものになった。だからこそ、現実社会のように人を尊重する倫理観を持った振る舞いを展開したい。

川畑嘉文(かわばた・よしふみ):
1976年、千葉県生まれ。ペンシルバニア州立大学卒業後(専攻は国際政治)、ニューヨークの出版社や東京の撮影事務所勤務を経て、フリーのフォトジャーナリストとなる。世界各地を訪問して、難民キャンプや戦争・災害被災地での取材を行いつつ、雑誌などに写真と原稿を寄稿している。2011年「地雷原の女性たち」がJRPリアリズム写真集団主宰コンテスト「視点」に入選。2014年、5枚組写真「シリア難民の子どもたち」がJPS日本写真家協会主宰コンテストで金賞を受賞。著書に『フォトジャーナリストが見た世界 地を這うのが仕事』(新評論)。

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2014年8月21日(木)19:44

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