2.構内物流の大切さ
日本のサプライチェーンを見てみると、調達物流=生産物流=販売物流=静脈物流に大きく分かれる。下図にある概念の内、構内物流とは、工場内物流、場内物流、あるいは過去にマテハンとも呼ばれた位置づけである。今回の製鉄所での火災事故は正に生産物流と直結する問題である。
工場内でのモノの入庫、保管、出庫などの機能に加えて、モノの運搬、ライン供給、そして出荷のための荷揃えなどの準備という機能がある。専門用語や業界用語では、在庫管理、生産管理、出荷管理、納入管理ということもある。本来、構内物流には次の3つの役割がある。
1.サービス(用役供与)の提供
2.司令塔いわゆる指揮官
3.構内作業効率の追求
この内3は多くの工場で実行されており、分かりやすい。構内レイアウトや物流の仕組み、物流業務自体を効率化することで物流原価を低減する活動である。 一方で、1は一言で構内の主役部署に対してサービス度を高め会社全体の生産性向上に寄与する活動で、工場内での生産ラインへの供給が主にこれにあたるだろう。 肝心の2は物流機能が工場内の司令塔になるというもので、定時供給、定時引取りを行って生産ラインの調整機能になるとともに、作り過ぎのムダといった非効率事象を指摘し排除する機能である。これら3つの役割を、この順番で行うことが構内物流に課された任務である。
こういう目で見てくると製鉄所内の構内物流を実行するための各部署の役割が明確になっていたかが反省、レビューされる点だろう。
名古屋製鉄所は自動車の車体などに使われる高品質の鋼板が主力製品で、事業継続には特に神経を尖らしていたようだ。今年同所で起きた4回の停電トラブルでも全て発生から1週間以内に操業を開始している。BCP(事業継続計画)において顧客に安定的に鋼材を供給し続けることは同社のBCPの要だったのはわかるが、安定供給を維持するために安全面への配慮が欠けていたとしたら本末転倒としか言いようがない。
専門用語だがRTO(目標復旧時間)を守ることは鉄鋼の顧客である自動車会社の信頼獲得に極めて重要なことは言うまでもないが、それ以上に工場の従業員、下請け業者などの生命、さらに周辺地域への配慮を欠いたとすれば、世界一の伝統ある製鉄会社として、同社の社会的責任の上で大きな損失を被ったと言えるのではないか。