上原 修(特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会理事長)
最近、中東でイスラム国(略称:IS)という語句をよく聞くようになった。石油危機が数々あったにも拘らず、もともと日本人にはあまり関心のない中東諸国だが、筆者がフランスに長くかかわっていた頃は現地マスコミで中東の記事が出ない日はなかったことを記憶している。それは今も変わっていない。
調べたところでは、この「イスラム国」というのはイラクとシリアで活動するサラフィー・ジハード主義組織であるらしい。2014年6月、カリフ制イスラム国家の樹立を宣言し、イラクとシャームのイスラム国から改称したそうだ。国家と自称するものの、日本・欧米諸国などに留まらず、周辺のスンニ派イスラム教諸国からも国家として承認されていないほか、「イスラム国」という名称への批判が多い。ヨーロッパの線引きにより勝手に作られた現在の中東のイラクやシリアの国土を否定し、武力によるイスラム世界の統一を目指しているのが実態らしい。
この勢力が多くの資金、人材、兵器・物資を世界中から集めて影響力を拡大しているのは実に恐怖だが、今や産業界にも負の影響を与えつつあることが分かった。いわゆるサプライチェーンの寸断である。これまでもグローバルリスクに関して、テロや自然災害、人的ミスによる事故など国内でも多くの災害を経験してきたが、日系企業が海外進出を懸命に進めている中では、今回の新しい国?の突然発生は最も警戒すべきことの一つだろう。