50~100年というのは、スギやヒノキなどの針葉樹の苗を植えて材木として使えるようになるまでの期間である。見た目が森っぽくみえるのでいいなら、もう少し短くても大丈夫かもしれない。それにしても長い時間が必要だ。自分で植えた森の一人前の姿を見届けられるのは、若い方に限られる。苦労の結果が自分の代では完成せず、子どもや孫の時代でやっと日の目をみる。森づくり(林業)とは、ガウディのサクラダ・ファミリア教会を創るのにも似た作業だ。
収穫できるまでの時間の長さが、産業としての林業を、現代社会の中で成立しにくくしている。以前、ある企業グループの社長さんばかり6、7名を取材し、お話を聞く機会があった。そのとき感じたのが、社長職にある方がいちばん気を遣っているのはステークホルダーのこと。つまり株主様のことだった。
自分の任期中にステークホルダーに対していかに責任を果たすか、任期中の株価を上げることをつねに優先してお考えになっていた。雇われ経営者としては、それがあるべき姿なのだろう。百年の計を語るような経営者には、とんとお目にかからなかった。孫や子の代のことよりも、目先の自分たちの栄華を貪ってやまないのが現代の日本の姿だ。このような社会で100年先のこと考えるなど想定外なのだろう。そんな風に目先の、足元ばかりみているから、気づいたら崖から転落しているということになる。
さて、2014年に当団体の森づくり活動に参加していただいた方へのアンケート調査によると、好きな森づくりの活動は「木を植えること」、「木を伐ること」、「下草を刈ること」の順。植林は人気がある活動だ。木を植えた後、最低5年から7年は夏に下草刈りが必要になるので、団体としては正直なところむやみに植林をしたくない。夏の下草刈りの人員確保がすでに難しくなっているからだが、それはさておき、木を植えるという行為は、森を創っているという実感をいちばん与えてくれる。