植林で気づきたい「森の時間」とは――持続性のある社会の選択を[岩崎 唱]

個人的にも「木」を植えることは、その土地に「気」を植えることにつながるように感じている。自分とまったく無縁な土地でも、木を植えることにより、その土地とつながりができる。自分が植えた木は、雪の下で育っているかな?とか、台風の風雨に負けなかったかな?と都会にいても森に想いを馳せられる。

同時に、森の時間についても考えられる。5年、10年、植えた苗はどのくらいの大きさになっているだろう。20年、30年、少しは森らしくなっているだろうか。そして50年、100年、自分が植えた苗は大きく育ち、誰かの手によって伐り倒され、運び出され、製材されて、どこかの家の柱になるかもしれない。その家は、父から子へ、子から孫へと何代かの家族が住み、たくさんの思い出を刻んでいくかもしれない。1本の苗が100年を超える物語を内包しているという想いはロマンチックすぎるだろうか。

森のライフスタイル研究所では来る3月、4月に千葉県の蓮沼殿下海岸の海岸林と長野県佐久の大沢財産区で植林を行う。6月になって雪に閉ざされていた林道が開通したら、カヤの平高原牧場でもブナの植樹を行う。参加者には、木を植えることで、100年先の未来へ続く「森の時間」に気づいてもらいたいと思っている。物事を判断するのに、短い物差しばかり使わず、長い物差しも使って欲しいものだ。森が教えてくれることは、実はたくさんあると思うのだ。今日、明日のことは大切だが、100年先のことも見通して、いま何が大切で、何をすべきかを考えてほしい。

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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