齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
今回は、7月20日開催のセッション「ビジネスと人権」の内容を紹介致します。報告者として、熊谷謙一氏(国際労働財団副事務長)、黒田かをり氏(CSOネットワーク事務局長・理事)、ファシリテーターとして谷本寛治教授(早稲田大学商学学術院商学部)が登壇しました。
ビジネスと人権をめぐっては、1990年代半ば以降、途上国での人権活動家・労働組合に対する企業や政府による弾圧、児童労働、少数民族の生活を脅かすような開発などの問題が指摘され、労働・人権に対する関心が急速に高まってきました。グローバル化にともない、サプライチェーンにおける人権問題をチェックする必要性も高まっています。
一方、人権問題はこうした「海の向こう」の問題のみならず、日本国内でも、以前から長時間労働やセクシュアル/パワー・ハラスメント、実習生に対する賃金不払いなど、「足元」の問題として企業内に存在しています。
日本の企業社会においては、何を人権問題としてとらえるのか理解にばらつきがあること(従来から認識されてきた同和問題だけでなく、障がい者、高齢者、外国人、LGBT、パワハラ/セクハラなど)、多くの日本企業が、次々に策定される国際基準への対応に苦慮していることが熊谷氏・黒田氏の両氏から指摘されました。
■ビジネスと人権をめぐる国際的動向
現在の国際的議論は、国連「多国籍企業及びその他の企業に関する規範」が大きな契機となっています。この規範が起草された際は、人権の尊重・保護などを目的として、国際法のもと企業をモニタリングすることが意図されていました。
しかし、経済界がこれに猛反発したため、ソフト・ローによる取り組みが進められるようになりました。
ILO(国際労働機関)が1998年に策定した、グローバル化における普遍的な中核的労働基準(結社の自由と労使対話、強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、職場での差別の排除、の4分野で構成)をもとに検討が進められていきました。