企業経営における持続可能性を考える(1)【企業と社会の関係】

齊藤紀子さん齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)

今回は、2014年9月18日(木)から19 日(金)に「持続可能性と戦略」を統一テーマとして開催されるJFBS 第4回年次大会についてご案内いたします(於:早稲田大学)。22号でもご紹介した通り、企業と社会の関係をテーマとする学界では近年、持続可能性をめぐる議論が大変活発化しています。しかしながら、この持続可能性という概念については、分野ごとに独自の理解がなされ、意味が付与されているということも指摘されています。

おそらく現在最も広く用いられている持続可能性とは、この地球の自然環境や天然資源をいかに世代を超えて維持していくか、という意味合いでしょう。自然環境や社会構造を犠牲にすることなく経済発展を実現するという「持続可能な発展」はあらゆる国と地域における中心的課題となりました。

その一方で持続可能性は戦略理論の領域においても、異なる意味をもって常に中心的テーマとされてきました。持続可能な競争優位という文脈では、市場でその競争上の地位が継続し得る程度を意味し、企業の戦略行動がもたらす環境的、社会的影響に関する含意はありません。つまり、戦略に関する理論はたいてい純粋に経済的理論であり、その従属変数は常に株主資本価値の最大化でした。

しかし現在、戦略研究者も実務家も、企業の経済的パフォーマンスの持続可能性が、単に経済合理性のみに基づいて経営資源や能力の最適配分をするだけでは実現できないという現実に直面しています。いまや企業の戦略や関連する諸理論の検討において、持続可能性の持つ社会的、環境的、経済的側面を統合させることは不可避となっています。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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