アクサ生命保険では、CSRを本業のビジネスプロセスおよび企業文化に組み込んでおり、CSRをKPIの1つとして測定し、企業の責任に関する担当役員が経営層に直接報告する責務を担っているとのこと。
三井物産では、社会・顧客/パートナー・従業員にとって価値を生み出す「良い仕事」を通して社会に価値を生み出し、社会・環境貢献活動を行い、コンプライアンスの徹底、内部統制の整備・向上を図ったうえで、ステークホルダーに対してコミュニケーションを図り、社会の信用を得ることをCSRとCGの関係で重要なことと整理しているとのこと。
これらの報告を踏まえ、谷本寛治教授(早稲田大学)からは、企業経営とステークホルダーの関係性の観点から次のような指摘がなされました。「企業は経済・環境・社会に関する問題についてステークホルダーからの期待に応えていかなければ株主価値を高めることはできない。つまり、企業価値を生み出していくためにはステークホルダーと良好な関係を構築していくCSR経営が重要である」。
今後求められる具体的方策として、CSRを戦略や中期経営計画、各部署の行動計画に組み込み、経営委員会において半期/四半期ごとに財務/非財務パフォーマンスをチェックしていくことが挙げられ、今まで以上にステークホルダー・エンゲージメントを実施していくことが提起されました。
グレゴリー・ジャクソン教授(ベルリン自由大学)から、CSRと法規制について「CSR経営が進んでいる国では法規制は弱く、そうでない地域では法規制が強い」「今後、CSRを巡る法規制や基準はどうなっていくか」との問いが示されました。
「CSRの進み具合が分かるものとしてのCSRレポートは、制度や取り組みの紹介にとどまることが多く、CSRの測定はまだ課題が多い」「グローバルサプライチェーンについては、必ずしも複数国にわたる規制があるとは限らないため中立的な世話役が必要」「労働・消費者セクターからは法規制への期待が強い。今後法制化が進むのでは」などの議論が行われました。
(この記事は、株式会社オルタナが2013年11月5日に発行した「CSRmonthly 第14号」から転載しました)