齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
今号では、昨年9月開催のJFBS第3回年次大会兼国際ジョイント・カンファレンスより、「サプライ・チェーン・マネジメント」(SCM)を巡る議論について紹介します。サプライ・チェーンにおける環境・人権・労働などのリスクに対し、企業はどのようなマネジメントを行っていくべきか議論されました。
■協働がSCMの質を高める
本セッションでは、まずアラン・アイケン氏(ファーウエイテクノロジー社)より、サプライヤーの選定とマネジメントに関する規準に、技術、品質、コスト、納期などに加えて、持続可能性のための取り組みが組み込まれるようになっていることが指摘されました。
例えばカーボンフットプリントを減らすためには、製品コンセプトの段階から再利用・リサイクル・代替可能な部品利用・再生可能エネルギー利用など、ライフサイクル全体を考えておく必要があります。
様々なステークホルダーと協働してSCM を行うことによってビジネス全体の質が高まることが指摘されました。具体的には、業界内企業間の協働はコストとリスクを低減し、NGO との協働は透明性を高め、労使間の協働は従業員の潜在能力を引き出すこと、など。
ニック・バーター上級講師(グリフィス大学)からは、持続可能性という概念の理解が過去20年強の間に、環境だけでなく社会や人に関する概念にまで広がってきたことが指摘されました。そして、企業は社会に埋め込まれた存在であること、企業は社会を必要としていても社会は企業を必要としていないこと、社会に存在し続けていけるように株主だけでなく他のステイクホルダーの利益を最大化していくことが重要である、との見解が示されました。