企業と社会―国際学会での議論(1)【企業と社会の関係】

齊藤紀子さん

齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)

9月19~20日、早稲田大学でJFBS第3回年次大会兼 国際ジョイント・カンファレンス「CSRとコーポレート・ガバナンス」(主催・共催:企業と社会フォーラム、フンボルト大学国際CSRカンファレンス、ベルリン日独センター)が開催されました。

欧州、アジア、中南米などの約20カ国から、研究者および実務者(企業、NPO/NGO、消費者セクターなど)160人ほどが参加し、議論を通して交流を深めました。企業活動のあり方や社会との関係を考える、この領域では国内初の国際学会となりました。

今回から、本カンファレンスにおける企画セッションでの報告・議論内容についてご紹介して参ります。今号ではプレナリーセッション1「CSRとコーポレート・ガバナンス:日欧の比較研究」の内容をご紹介いたします。

■企業価値を高めるCSR 経営・ガバナンス
本セッションではまず、ベレーナ・タルコット教授(ベルリン自由大学)より、CSRとコーポレート・ガバナンス(以下、CG)の関係について概念整理が行われ、CSRは長期的な経営戦略基盤であり、透明性を高めるためにCSR経営を行う企業の財務的パフォーマンスは相対的に良いことが指摘されました。そして政府や株主の役割、CSR報告書の質を高める戦略などについて問題提起が行われました。

続いてカーステン・ホフマン氏(GIZ:ドイツの国際協力機関)、小笠原隆裕氏(アクサ生命保険)、木下雅之氏(三井物産)より、各社におけるCSRとCGの理解と取り組みについて報告が行われました。

GIZでは、「経済成長および社会的責任」と「ガバナンス」を表裏一体の関係性ととらえており、CSRのために経営層がイニシアティブを発揮するべく、経営層は中間管理層に対して規制当局・投資家・労働者などに関する動向を踏まえて方針を示し、中間管理層は経営層に対してKPIに関する情報や持続可能性に関するリスクと対応状況などの情報を報告する仕組みづくりを推進しているとのこと。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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