IUCN(国際自然保護連合)が定義する「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」には、2014年11月時点で約2万2千種が登録されている。生物多様性の確保は喫緊の事項だ。本コラムでは、味の素バードサンクチュアリ設立にも関わった、現カルピス 人事・総務部の坂本優氏が、身近な動物を切り口に生物多様性、広くは動物と人との関わりについて語る。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)
4月末の安倍総理訪米に際し、ホワイトハウスで開催された歓迎晩さん会において、山口県産の日本酒「獺祭」が振る舞われた、との記事を目にした。
獺祭(だっさい)とは、カワウソが、捕まえた魚を集め広げている様が、魚を祭っているようだ、ということから来た言葉といわれる。転じて、詩文をつくるにあたって、辞書や関連書籍など様々な資料を広げ散らかすことを獺祭といい、正岡子規は、自らの住まいを獺祭書屋と号した。
全国に伝わる河童伝説のモデルになったとも言われる、ニホンカワウソ。長らく生存の痕跡や確かな目撃情報がなく、予想されていたことではあったが、2012年8月、環境省による、レッドリスト改訂に際して、北海道亜種、本州以南亜種とも、「正式に」絶滅種と指定された。
そのカワウソは、1928年には既に捕獲禁止となっていて、1964年に天然記念物、翌年には特別天然記念物にも指定された。それにも拘わらず絶滅を防ぐことはできなかった。そして、昭和年代に生存が確認されていた哺乳類として、日本では初めて、絶滅種と指定されることとなった。
同じ2012年、東京の野生生物の「復活」が、様々な場面で話題となった。多摩川を遡上するアユが1200万尾と報じられ、都心のカワセミについては、NHKのテレビ番組で特集された。個人的にも、「そんな光景が見たいものだ。」と数十年前、夢のように思い描いた、都心の水辺でのカワセミの姿を、この年以来、撮り貯めている。今、都心部のある程度緑のある水辺では、カワセミは比較的観察しやすい野鳥となっている。