日本では年間約2千人の子どもが小児がんにかかり、その内500人ほどが命を落とすという。また、過酷な闘病生活は子ども本人だけでなく親をも苦しめる。『夢の病院をつくろう チャイルド・ケモ・ハウスができるまで』(NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス著、ポプラ社刊、1296円)は、親子で治療に専念できる国内初の小児がん専門治療施設が誕生するまでの軌跡を紹介した本だ。
■不自由な闘病生活
本書の読みどころは、小児がんの闘病生活がいかに辛く、不自由なものかを当事者の視点で伝えている点だ。とりわけ抗がん剤による化学療法(ケモセラピー)は強い吐き気や脱毛など、副作用が苛烈だ。チャイルド・ケモ・ハウスの「ケモ」は、このケモセラピーを意味する。治療中に行われるさまざまな検査もまた、大きな苦痛がともなう。
そして親も、がんや薬の副作用、検査に耐える子どもの姿を見守っていなければならない。わずか2畳ほどの病室ではプライバシーも保てず、つきっきりの看病は心身に重くのしかかる。こうした親子での闘病生活が、半年から1年も続くのだという。
また、本書には小児がんにかかった少年の2年間の闘病生活を取材した毎日新聞記者のルポルタージュが収録されている。少年は6年間の闘病の末に2009年、9才の誕生日を目前に亡くなった。周囲の支えを力に果敢に病気に立ち向かう少年の姿は、読む者の胸を打つ。
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