アパレルメーカーの三陽商会が、衣服を通じて豊かなこころを育む「服育」に取り組んでいる。小学生への服育授業や、工場のある地域の子どもたちに工場見学プログラムを実施。昨年12月からは、「服育」の一環として、明治大学の学生と「就職後も長く着られるコート」をコンセプトに商品開発するプロジェクトを始動した。(オルタナ編集部=辻陽一郎)
「服育」とは、衣服に関する事柄を通じて、コドモたちの豊かなこころを育む教育のこと。三陽商会では、「服を大切に長く着る心を育てる」をコンセプトに「服育」に取り組む。
そこで、同社は大学生とともに商品の企画・販売を行う。実際にサプライチェーンや価格設定の背景など服ができるまでのプロセスに触れることで、モノづくりの根幹を学んでもらう。
今年夏には、福島にある工場を訪問し、服の製造過程を見学する。服が機械ではなくて、人の手で一枚一枚つくられているということを直接見てもらうことが目的だ。工場や生地屋は年々減少していて、技術の伝承が危ぶまれている現状もある。
サンヨーコート企画グループ主任の石田和孝さんは「安い服を短いサイクルで消費していく『ファストファッション』が当たり前な時代に、服を大切に着るという日本人の当たり前の心を取り戻してもらいたい」と言う。
同社は、2013年の設立70年を節目に、「100年コート」をコンセプトに一生ものとなる服をつくる取り組みも始めた。「100年着られるコート」ではなく、「100年愛してもらうコート」として、永続的に修理や裏地の取り替えなどを行う会員システムだ。
マーケティング戦略室CSR担当の西野祐子さんは、「人の生活の基本である衣食住の一つだからこそ、本当にいいものを身につけてほしい」と話す。