ミドリガメ、本格的駆除へ――私たちに身近な生物多様性(15)[坂本 優]

環境省は、来年度からミドリガメの本格的駆除を実施すべく、今年度、いくつかの地域でモデル事業を実施するという。効率的な捕獲方法や処分方法などが検討、検証される。ミドリガメの大半はアメリカから輸入されたアカミミガメ(ミシシッピアカミミガメ)だ。多くは甲羅の長さがほんの数cmの幼体の頃にペットショップなどで売られるが、成長すると大きなものは30㎝近くになる。かつて、「アマゾンの緑ガメ」と称して売られたカメもこの仲間だ。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)

甲羅の長径25cmほどの大型のアカミミガメ。このカメも何十年か前には金魚鉢の中で、子ども達を喜ばしていたのだろうか?(上野不忍池)
甲羅の長径25cmほどの大型のアカミミガメ。このカメも何十年か前には金魚鉢の中で、子ども達を喜ばしていたのだろうか?(上野不忍池)

アカミミガメをはじめとするミドリガメたちは日本中で野生化しており、大都市の公園や寺社の池などでも普通に観察できる。一方、固有種のニホンイシガメなどは、すっかりその数を減らしている。

典型的な侵略的外来種として、公園の池や農業用のため池の掻い掘りの際など、これまでも駆除の対象となってきた。ところが、外来生物法にいう「特定外来生物」としての指定はなされていない。理由は、その膨大な取引数、飼育数だ。

「特定外来生物」に指定された場合、原則、取引や飼育は禁止されることになる。年間十万匹単位の取引数、百万匹単位の飼育数からみて、これらを一挙に禁止した場合、現状に加えて、更に膨大な数が自然界に新たに放たれるであろうことが容易に推測される。そのため指定に踏み切れないと言われている。

sakamoto_masaru

坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..