ワタミ過労死訴訟、賠償金1億3365万円と再発防止案で和解

ワタミグループの正社員だった森美菜さん(当時26)が2008年に自殺し、遺族が原告となって、ワタミや当時代表取締役だった渡辺美樹参議院議員らを提訴した損害賠償請求訴訟が12月8日、東京地裁で和解した。ワタミ側は損害賠償金として1億3365万円を支払うほか、和解条項には過重労働再発防止策が盛り込まれた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

和解後、記者会見する森美菜さんの父・豪さん(左から2番目)と母の祐子さん
和解後、記者会見する森美菜さんの父・豪さん(左から2番目)と母・祐子さん(左)

森さんは2008年4月にワタミフードサービスに入社し、2カ月後の6月12日に自宅マンションで自殺した。森さんの遺族は、長時間労働を強いるなど安全配慮義務を怠ったとして、2013年に提訴した。被告であるワタミ、渡辺議員らは過重な労働が原因だったとして謝罪し、法的責任を認めた。損害賠償金として1億3365万円を支払う。

過重労働防止策では、実労働時間の正確な記録や36協定の上限時間を超えないこと、労働基準監督署から是正勧告があった場合には全従業員に周知すること、研修会やボランティア、課題作成など会社が実質的に指示するものについて労働時間として認めること――などが盛り込まれた。

さらに、2008年度から2012年度に入社した800人に対し研修会・ボランティア活動などに関する未払い賃金として一律2万4714円、2008年度から2015年度に入社した1000人に対し書籍や制服などの控除金返金として一律2万円5675円、総額約4500万円を支払う。

玉木一成弁護士は「損害賠償、慰謝料ともに過去最高に近い水準。再発防止策や他の新卒社員への支払いを認めさせたことは、判決を得る以上の成果になった」と話す。

父・森豪さん(67)は、「お金が目的ではなく、娘に何が起こったのか実態を知りたかった。娘の同期にも何かできないかと考えていたので、損害賠償金以外にも支払われるのが良かった。本当に反省しているのであれば、和解内容をすべて果たして、良い会社になってほしい」と訴えた。

ワタミは同日、「本日に至るまで、原告側にご心労を与えたことを心からお詫びする。現在、労働環境の改善に鋭意取り組んでおり、同様の事案の再発防止に努めている」とのコメントを出した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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