東京で聞く千鳥の鳴き声 

 

チドリの多くはシギなどとともに、夏鳥として日本に飛来する。もう今の季節、東京湾など東日本一帯に姿を現し始めている。

ダイサギ(左)に比べると、コチドリ(右下)はこんな大きさだ。初夏、ダイサギのクチバシはまだ黒っぽいが、秋にかけて黄色く変わる(個体差あり)

連休の一日、東京港野鳥公園に出かけ、観察小屋でひと時を過ごした。冬、池を覆うように浮かんでいたカモ類は、ほんのわずかな残留組を残して姿を消し、カワウやサギ類も数を減らしている。

けれども、その分、眼下を行き来するコチドリを、他に気を取られず観察することができた。せわしなく蛇行しながら頻繁に立ち止まり、片足をとんとんと足踏みする。この動きがいわゆる「千鳥足」と言われるものだ。

もちろん、酔っている訳ではないし長旅の疲れのせいでもない。小さな生き物を追いかけ、おびき出しながら採餌している敏捷なハンターの姿だ。そして、時折あたり一面に響く「ピーヨ、ピーヨ、ヒヨヨヨヨ」というさえずり。繁殖期の自己ピーアールもあってか繰り返し聞かせてくれた。東京湾のほとりで、ふと笛吹川の光景や歌碑がまぶたに浮かぶ。

チュウシャクシギ

この日は、チュウシャクシギの鳴き声も何回か耳にした。同じように澄んだ、よく響く声だ。コチドリに比べると、より伸びやかに「ビョ~、ビョ~、ビョ~、ビョ、ビョ、ビョ」と私には聞こえた。

千年前に詠まれた和歌と千鳥が、私のなかで東京湾と笛吹川をつないでくれる。当然のことながら、この間、社会と地球環境が持続して来たからこそのことだ。改めてそんなことを考えながら家路についた休日だった。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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