■変化の兆し2025年に
――近年、働き方改革が叫ばれていますが、今後の組織の在り方はワークライフバランスを重視した形に変わっていきそうですね。
原田:もうすでに変わっていると思います。40数年連続で少子化が進んだことで(出生数が減少に転じたのは1974年)、まだ有名企業は良いですが、多くの中小企業は採用が困難になっています。
かつては人口が少ない地域の若者が金の卵でしたが、今は全体の数が少ないので、自分の努力にかかわらず金の卵になっています。特に今はバブル期並みに、新卒の就職状況が良い中で、今の子たちは「ダメになった」とも思います。
――ダメになるとはどういうことでしょうか。
原田:仕事をさぼったり、いきがったりするようになったという意味ではありません。
ある程度、若いうちは厳しい状況を経験したほうが良いと思っていますが、今は競争もなく、楽に会社に入れます。
新卒の3割が3年で辞める割合に関しては、バブル期から変わっていないのですが、動機が異なります。バブルの頃は、「もっと良い会社はないか」というポジティブな理由で辞めていましたが、今の若者たちは「会社と合わないから」などの後ろ向きな理由で辞めていきます。
特にこの数年は、安易なきっかけで辞めている人が多いです。それでも、転職できてしまう。そういう意味で、若者に危機感がなくなり、失業率が40%を超えるヨーロッパの若者などには見られない傾向があります。
さらに、これは国民性の影響だと思いますが、SNSでより身内とつながったことで、「ムラ社会化」現象が起きています。そもそもSNSは、国や世代を越えて、いろいろな人とつながれるツールです。
しかし、日本の若者は知らない人とはつながりを持ちたがらず、知っている人だけで交流するようになっています。その結果、つながっていない人には関心を持たなくなります。例えば、高校の友達がバンドをやっていたらそのライブチケットは買いますが、誰か知らない人が困っていても、その人のためにわざわざ何かを買ってあげることはしなくなるでしょう。
―― 一方で、社会問題の解決を志す社会起業家もミレニアル世代から生まれています。
原田:社会起業家がアイコンとして、メディアに出ることは10年前にはなかったことです。2025年には、団塊世代が引退し、団塊ジュニアに世代交代します。団塊ジュニア世代に象徴的な社会起業家が多いので、だいぶ社会が変わると思います。変化は2025年に起きると予測しています。
原田曜平:
1977年、東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。専門は日本及び中国、アジアの若者研究とマーケティング。著書に『ヤンキー経済』『さとり世代』ほか。日本テレビ「ZIP!」、TBS「情報7days」レギュラー。
■この記事は雑誌「オルタナ」50号(9月末発行)から転載。50号では「ミレニアル世代の消費傾向」を分析しました。