世界の覇者と日本固有種 対照的な2種のセキレイ

セグロセキレイ

セグロセキレイは、同じく白黒ツートンカラーのセキレイだが、空を飛ぶ鳥類にはめずらしく、日本列島を中心に分布する。朝鮮半島や台湾、ロシア沿海州などでも観察されるが、日本固有種という言い方もされる。外国人バードウォッチャーの人気も高い。

セグロセキレイ(東京港野鳥公園)

日本固有種とも言われるほどだから、日本周辺の本来の自然環境に適応しているのだろう。日本でも昔ながらの環境が残されている場所を中心に生息しているようだ。同じ地域でも河川改修されコンクリート護岸の続く場所はハクセキレイが多く、セグロセキレイは、改修されていない、あるいは河原が広がっている区域など、比較的自然が残っている水辺で見かけることが多い。

私の場合、あいにくハクセキレイのときのように、鳴き声で気づくという大きな鳴き声を聞いたことはない。ただ、尾を振りながら拍子をつけているような、チュチュ、ジュジュといった地鳴きの雰囲気は、歯切れのよさでは劣るものの、ハクセキレイやキセキレイに似ている。

大きさは、ハクセキレイとほとんど同じか、やや大きく感じるくらいだが、人間の手で改変された環境への適応力ではハクセキレイに敵わないようだ。

直ちに危惧される状況ではないにせよ、ハクセキレイに押されて徐々に生息範囲が狭まっているとの見方もある。

ご覧のとおり、ハクセキレイもセグロセキレイも白黒ツートンカラーで見た目はよく似ている。

顔を横から見たとき、黒い顔で目の上に白い眉毛(眉班)があるように見えるのがセグロセキレイ、白い顔に目を横切る黒い線(過眼線)が走っているのがハクセキレイだ。

セグロセキレイのほうがより黒く感じるが、ハクセキレイも背中は黒い。(個体差はあるが、ハクセキレイの背中は、幼鳥や、特に秋~冬の期間は灰色っぽくなる。)

似たような姿形、大きさの両種だが、ハクセキレイは分布を広げ、セグロセキレイは日本列島の中でも生息域が狭まっている。餌はかなり重なっているようだから、餌となる生きものの増減から受ける影響については、ハクセキレイに一方的に有利とも言えないようだ。だとすると「ねぐら」となる環境の変化、あるいは都市化や河川改修による水辺や湿地の減少など「乾燥化」への適応力が違うのだろうか。そうであったとしても、適応力が違うのはなぜなのか。どこにそんな違いがあるのか。考えると疑問は尽きない。

ハクセキレイ。個体差は大きいが秋から冬にかけて背中が灰色になる

身近な自然観察にも、日々新たな発見と新たな「なぜ?」がある。そして、それがまた楽しみでもある。

sakamoto_masaru

坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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