今回の基準案の項目 5)で、「原材料の原産地や製造事業者に関する指摘等の情報を収集し、その信頼性・客観性等に十分留意しつつ、上記2を満たさない紙を生産する事業者から調達するリスクの低減に活用することが推奨」との文言が入りました。
これは、認証制度に頼ってしまうのではなく、たとえ認証を得ていたとしても、調達先で上記の基準を満たさないことがないか、加えて、調達先以外でもサプライヤーの事業者が基準を満たさないような問題に関与していないかを考慮するというもので、これは、以下のFSCの認証取得者に求める考え方にも合致しています。
FSCでは、認証取得者については、「組織とFSCとの関係に関する指針(FSC-POL-01-004)」で、11違法伐採、または違法木材または林産物の取引、2森林施業における伝統的権利及び人権の侵害、3森林施業における高い保護価値(HCV)の破壊、4森林から人工林または森林以外の土地利用への重大な転換、5森林施業における遺伝子組換え生物の導入、6ILO中核的労働基準への違反、といった活動に直接または間接的に関わらない自己宣言文書に署名し誓約をしており、安全衛生への誓約も企業レベルで行うこととなっています。
これは企業レベルでのコミットメントであり、単に認証地や認証製品に関連しない分野でも対象としています。そして、これらに著しく反している企業については、FSCから全ての認証を取得できなくなる「絶縁(Disassociation)」という措置を受けています。例えば、上述のAPP社やAPRIL社は絶縁措置の対象企業となっています。
この項目 5)に照らせば、こうした企業からの調達は控えることが必要になるはずです。このようにPEFCについては多くの問題やリスクがありますが、FSC認証については、今回設定された調達基準案を概ね規定上は満たすと考えられます。そして、現状では最も信頼できる認証と言えます。
ただFSCと言えども完璧ではないので、中には問題を抱えて是正措置を求められたり、NGOからも批判を受ける事例もあることから、広く情報を得て注視をしていくことは必要な場合もあります。
そして調達先の状況だけでなく、企業レベルでのリスク評価を行うという意味で、この項目5)は重要な点ですので、さらに強化することが必要だと思います。
よって「リスクの低減に活用することが推奨」といった表現に留まらず、「リスクの低減に向けたデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)に取り組む」といったレベルでの強化が必要ではないでしょうか。
2つの提案
最後に環境・社会課題以外の件で2つ提案です。東京大会の紙の調達基準案と、認証紙の合致状況について注目しましたが、紙の基準案では、古紙の比率を最大限にするとしている点は評価できます。
しかしできれば、使い捨てとなるトイレットペーパーなどは古紙100%と決めたり、コピー用紙などはグリーン購入法に準拠して古紙比率70%以上とし、古紙100%推奨といった規定はできるのではないかと思います。
そして、項目 3)では「これらの認証紙以外を必要とする場合は、バージンパルプの原料となる木材等について、別紙に従って1~5に関する確認が実施されなければならない」と規定しています。
その「別紙(認証紙以外の場合の確認方法)」の規定では、「説明責任の観点から合理的な方法に基づいて以下の確認を実施し、その結果について書面に記録する 」とあるだけで、第三者によるチェックは必要ないこととなっています。しかし、基準が適合しているかについては、第三者による確認を求めることが必要ではないかと考えます。
このように、紙の調達基準案にも改善点は多数ありますので、是非パブリックコメントを寄せていただければと思います。