WWF「東京五輪・パラの調達コードに重大な欠陥」

WWF(世界自然保護基金)ジャパンおよびWWFインターナショナルは1月16日、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性の取り組みへの懸念を訴える要望書を提出した。要望書では、木材、水産物、紙、パーム油などの商品の調達基準に「重大な欠陥がある」と指摘している。(オルタナ副編集長=吉田広子)

WWFジャパンによると、「持続可能な調達コードを策定するために、環境(WWFジャパンからの専門家一人を含む)、人権、労働分野などの専門家でワーキンググループが構成された。しかし、組織委員会はワーキンググループからの助言に対して、真摯に耳をかたむける態度が見受けられない場面も多々あった」という。

WWFジャパンの筒井隆司事務局長は「調達基準を策定する東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委員会)が、ベストプラクティスを大きく下回り、かつ、国際的なイベントには妥当とはいえない調達基準を定めたことが残念だ。東京2020大会の開催国として、日本は持続可能な方法で資源を調達し、消費する責任を負っている。何をレガシーとして残そうとしているのか」と疑問を投げかける。

WWFジャパンおよびWWFインターナショナルがIOCに対して、要望書で求めていることは次の通りだ。

・組織委員会に調達結果の開示を要求すること。具体的には、東京2020大会で調達された全物品の生産地域と、各認証の内訳を含む認証製品の比率の開示を求めること。

・組織委員会の調達コードと、その運用実績に関して、外部機関によるレビューを実施し、それを2020年12月31日までに報告書にまとめ、公表すること。

さらに、特に懸念している点として下記を挙げる。

▼木材と紙
木材と紙の調達コードは不十分であるため、責任ある調達を追及することができず、森林破壊や人権侵害のリスクを低減することは困難です。この調達コードでは、第三者認証を取得していない木材や紙であっても、事業者にデューデリジェンスを義務付けることもなければ、外部監査を要求することもありません。特に、認証されていない木材と紙のリスクを最小限に抑えるには、適切な監査メカニズムが不可欠であると、私たちは考えています。

▼水産物
水産物調達コードは、必ずしも持続可能性が担保されていない認証を取得した水産物の調達を認めています。さらに、認証取得していない水産物であっても、生産者が地方自治体等に資源管理/漁場改善計画を提出さえしていれば、その計画が生物多様性への配慮が不十分なものであろうとも、調達が認められてしまいます。結果として、資源が枯渇傾向にあるものも含め、約90%の国産水産物が提供され得ることになります。したがって持続可能性を担保した調達コードだとは到底考えられません

▼パーム油
「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」という名称自体が、調達コードが持続可能ではないことを明確に示しています。組織委員会は、国際的には合法性しか担保していない手段と見なされているISPO やMSPO を、持続可能な認証だと認識しています。

WWFインターナショナルのマルコ・ランベルティーニ事務局長は、「地球はかつてない脅威にさらされている。オリンピックのように注目を浴びる大会は、持続可能性を実現、また牽引してゆく機会であり、大きな責任が伴う。東京2020年大会は、準備から会期中のすべての場面において、持続可能性の実現のために、野心的かつ革新的な取り組みが求められる」と指摘した。

◆要望書(1月20日公開)  
http://a01.hm-f.jp/cc.php?t=M616773&c=52&d=88df

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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