書評『SDGsが問いかける経営の未来』

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一見して目線も問題意識も違う二冊が「ステークホルダーとの協働」で交差するのだ。

重なりの意味は、前書の精神論的なレスポンシビリティ・マインドと本書の事業戦略的な経営モデルでそれぞれの「物足りなさ」の相互補完である。

レポンシビリティのマインドを持つ実践者に事業戦略のノウハウ―戦略立案手順や分析ツール―を授け、事業戦略的な経営モデルにレスポンシビリティのマインドを吹き込む。

つまり戦略立案から実践まで、方法論と精神論が一体になるのである。これにより社会的課題の解決方法の全体像ばかりか、事業として進める具体的な手順が鮮明になるのである。

この点で本書の貢献は大きい。

その反面、政治・経済を外部要因に置く経営目線ゆえの束縛から免れられないようだ。

たとえば、新自由主義的なグローバル資本主義により、途上国の安全共同体=コミュニティの崩壊→大都市へ人口の大量流入=スラム化→先進国への労働者の大量移住→インフォーマルなエスニックコミニュティの形成→移住先の住民や治安当局との軋轢等を辿る、人間を不安全・不安心にする構造があり社会的課題はこの構造の表層現象であることを人間の安全保障研究では指摘する。

このような視点は本書にはない。社会的価値から生じる、企業にとっての経済的価値のブーメラン的な毀損だけが構造的な変化ではないのである。

グローバル資本主義に適応していく経営モデルではなく、グローバル資本主義を超えた、政治・経済のイズム=主義を熟慮した上での、人間の顔をした経営モデルの模索もあろう。

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2019年11月19日(火)16:27

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