日本でも、企業がパーパス(存在意義)を定める動きが広がってきた。ESGの視点でも、消費者のから共感や信頼を得るためにも不可欠だ。パーパスは英語由来で、海外から輸入した概念と見られがちだが、実は日本の伝統企業の間でも脈々と受け継がれてきた。 (法政大学人間環境学部教授・長谷川 直哉)
経営構造の変革、ESGが迫る
SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定は、日本企業の競争優位を支えてきた資源エネルギー大量消費型経営に「NO」を突きつけている。
いま日本企業に求められているのは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点から経営のあり方を見直すことだ。サステナビリティと向き合う日本企業は二極化している。ESGを経営の中核課題と位置付けて変革に挑む企業がある一方、経営構造の変革を先送りしつつ旧来の発想で辻褄合わせをしようとしている企業も少なくない。
変革を恐れず、SDGsが提起した課題の中から事業機会をつかみ取り、それを新たなビジネスに育て上げることが日本企業には必要だろう。世界的なムーブメントとなったESGマネー(投資家・銀行・保険会社)は、脱炭素化に取り組む企業をサポートする動きを加速させた。なかでも機関投資家はサステナビリティの実現に向けた経営構造の変革を促すために、ガバナンス改革に多大な関心を寄せている。
21年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードや22年4月に予定されている東京証券取引所の市場区分変更・プライム市場の導入では、取締役会の実効性向上やサステナビリティを巡る課題への取り組み強化など、ESG経営を重視する姿勢が色濃く打ち出された。
若い価値観が企業を動かす