2020年は「薬剤耐性問題」への投資家行動元年

岸上有沙氏による2020年ESGニュースアップデートシリーズ。(Responsible Investor)

来月東京で開催予定だったRI Tokyo 2020年が、新型コロナウィルスへの対応として延期された。

人によっては1月末から既に社内対応に追われ、目前の業務に直接関わること以上に世の中のサステナビリティ動向に注力する時間が少なくなっているかもしれない。そんな方のために、そして春開催はなくなったRI Tokyoの代わりにも、少し頻度を上げて2020年に入ってからのRI動向を共有して行きたい。

今回は、以下の3つの動きを紹介する:

1.2020年:薬剤耐性問題への投資家行動元年
2.航空業界における低炭素経済への移行の模索
3.米国証券取引委員会(SEC):問われる規制当局の役割と行動

<2020年:薬剤耐性問題への投資家行動元年>

各国の若者を中心に起きていた気候変動に対する運動、Extinction Rebellionと同等な動きが薬剤耐性(Anti-microbial Resistance – AMR)課題においても必要だ。昨年、当時イングランドの最高医療責任者だったSally Davies氏は、政府関係者としては異例な呼びかけを行った。

Davies氏は現在、英国におけるAMR特使に任命されており、2020年をAMRに関する投資家行動元年として、活動を立ち上げた。

欧州委員会では、このAMR課題によるヘルスケア業界への負担は15億米国ドル相当と概算している。また、世銀は2016年時点で既に2008年の金融危機よりも大きな経済的ダメージを与え得る課題として、2050年までに世界のGDPの3.8%をも減少させるものと概算している。

こうした状況にDavies氏と同様の危機感を持った団体や投資家による活動が、少しずつだが活発化している。

途上国での公平な製薬へのアクセスを促すことで知られるAccess to Medicine財団は、今年初めて製薬会社におけるAMRベンチマークの実施とレポートの発行を行っている。

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kishigami

岸上 有沙

2019年4月よりEn-CycleS (Engagement Cycle for Sustainability)という自らのイニシアチブの元、各種講演のほか、Responsible Investor でのコラム執筆、J-SIF運営委員、AIGCCワーキンググループ等を通じて、ESG投資やサステナビリティに関連した企業・投資家行動とグローバル発信の促進に携わる。2007年よりESGとサステナブル投資に従事し、ロンドンでの勤務を経て2015年より東京に異動。FTSE Russellのアジア環太平洋地域のESG責任者として、企業との対話(エンゲージメント)、ESGインデックスやレーティングの開発と管理、及び機関投資家のスチュワードシップ活動の実行に関するサポートを務めた。慶応義塾大学 総合政策学部卒、オックスフォード大学にてアフリカ学の修士号取得。執筆記事一覧

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