しかし150億豪ドル(約1兆2千億円)に上る補助金や減税政策により、実質的に負担増となる世帯は全世帯の1割程度に相当する富裕層のみとなる見込み。具体的には、炭素税収の半分以上を物価上昇をおさえるための補助金に充てることにより、全880万世帯のうち800世帯は物価上昇以上の恩恵、もしくは一部補助金を受け取る。
さらには、年収8万豪ドル(約680万円)未満の全ての所得者は減税の対象となり、340万人の年金受給者は生活費上昇分以上の補償を受けられるなど、低所得者に手厚い内容となる。
オーストラリアが炭素税導入に踏み切ったのは、電力供給の93.1%が国内産の化石燃料による火力発電でまかなわれており、人口一人あたりのCO2排出量が世界最大であることが理由だ。政府は、この「不名誉」な順位を下げるための方策を検討してきた。
政府の方針発表後に民間調査会社が実施した世論調査では、物価上昇や雇用減少を懸念して国民の59%は炭素税反対を表明した。
与党労働党は協力関係にある緑の党を合わせても議会でも関連法案可決に必要な議席を辛うじて確保している状態。
野党保守連合や増税の対象となる企業の多くは競争力を削ぐと炭素税導入に反対を表明しており、今年中の成立を目指す関連法案の先行きは未だ不透明だ。(シドニー 小山理紗)
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