「美ら海」に原発?沖縄電力、今も研究

原発のない沖縄の海(本島中部付近、2010年7月)

全国の電力会社10社の中で唯一、原子力発電所を持たない沖縄電力。しかし「さまざまな発電方式を勉強するため」との理由で、2003年から原子力発電の研究を続ける。東京電力福島第一原発事故以降も、研究を続ける方針に変わりはない。「美(ちゅ)ら海」に原発は作られるのか。

■「具体的計画あるわけでない」

沖縄電力広報室は「例えばどこどこの場所にいつ頃、というような原発導入に向けた具体的な計画があるわけでは一切ない」と説明し、研究の内容については「日本原電に社員1人を派遣して情報収集しているだけ」と話す。

その日本原電では、出力数10万キロワット規模の中小型原子炉の研究開発を行う。最大電力需要が140万キロワット前後の沖縄県内に、100万キロワット級の大型原子炉は過大だ。09年8月21日付の沖縄タイムスは「(導入する場合は)需要規模からみて出力数10万キロワット程度の中小型原発が有望」との沖縄電力の見解を伝える。

つまり、同社は導入の可能性を否定しつつも「導入するなら中小規模の原発」と明確なイメージを持っていることになる。

■火力にほとんど依存も原発導入は困難

電力の9割以上を火力に依存し、標準家庭の電気料金が全国で最も高い沖縄電力にとって、エネルギーの安定確保は大きな課題だ。自然エネルギーの導入比率は、太陽光発電の場合、離島でこそ7~22%に達するが、沖縄全体では約0.4%と極めて低い。

しかし東電原発事故後の現在、容易に原発へは依存できない。しかも沖縄は米国統治時代、住民の不安をよそに大量の核兵器が配備されていた経緯もある。当時の米国民政府のPR誌「守礼の光」は1959年1月の創刊号で「原子力を平和へ」と題する特集を組み、原子力の平和利用を通じて生活が向上するとの宣伝を行い、核兵器に反発する世論を和らげようとしていた。

そうした歴史を持つ沖縄で、原発建設への理解を取り付けるのは極めて困難だ。何より、沖縄県内各地で自然保護に取り組む住民や、遠く福島から原発のない沖縄に避難している人々にとって、「美ら海」に原発を作る計画が具体化するような事態は「悪夢」でしかない。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年8月11日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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