「自分らしい社会貢献とは?」

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8月に行われた3期卒業生によるソーシャルビジネスグランプリ

社会にある課題をビジネスなどの事業の形で解決する新しい動き「社会起業」。それを学び、実践する社会起業大学(東京都千代田区)が注目を集める。2010年の開校から約100人の社会人が卒業し、そのうち3割もの人が会社やNPOを立ち上げた。ほかにもボランティアや企業内起業で新しい活動を始める多くの人々が巣立った。「自分の力で社会を良い方向に変えたい」。誰もが持つ願いを具体的な形にする夢の入り口だ。

約半年の講義では、第一線で活躍する社会起業家から、思いをビジネスモデルに導く方法や経営ノウハウを学ぶ。しかし、それだけではない。「学ぶ人が自分らしい生き方を見つけ、それが社会貢献に結びつけられるような取り組みを考え続けています」と、大学の学長の中村大作さん(33)は話す。

■ 50代主婦もレストランを起業

授業の中には、「なぜ事業を始めるのか」について、自らの原体験を学生同士で語り合う場がある。原体験を述べることは心の傷に触れることもあり、涙ながらに語る人もいる。「『やむにやまれぬ思い』があれば、事業で必ず突き当たる壁を乗り越えられる」。このように中村さんは考えるためだ。

「学校の授業についていけない発達障害を持つ子どもを助けたい」。この思いから多くのボランティアを集め、その子どもにあった学習方法で教えるNPOを立ち上げた会社員がいた。

「私は主婦。料理しかできない。でも自分らしい社会貢献をしたい」。入学時点にこう話した50代の女性は、ハンディキャップを持つ人が働き、気軽に食事のできるレストランを創業した。このように自分の心の奥底から、「社会を変えたい」という願いを仲間と共に見つけられるからこそ、卒業生の多くが起業にチャレンジするのかもしれない。

■ 挫折が起業のきっかけに
「私はこの大学の『0(ゼロ)期生』。学校作りと社会起業の生きた教材です」。21歳から70歳までの社会人学生、そして卒業生とともに中村さんは学校経営に奮闘する。中村さんは、かつて留学生の仲介ビジネスの経営を担い、安い価格で語学留学を提供することで年間渡航者3000人、年商10億円の規模まで会社を成長させた。

ところがリーマンショックで経営が悪化したことを契機に、幹部との経営方針の違いから会社を去ることになった。この挫折で自分を見つめ直した。

「過ちを他の人に繰り返してほしくない。志を持つ人が報われる社会を作りたい」。そこでたどり着いたのが社会起業をテーマにした学校作り。同じ思いを抱いていた株式会社リソウルの田中勇一さんと出会って開校に至った。

学長の中村大作さんと(左)、理事長の田中勇一さん

大きなことを成し遂げた社会起業家がメディアで大きく取り上げられ、社会の注目を集める。しかし「社会起業は本当に難しいことでしょうか。昔から日本人が当たり前に行ってきたことです」と、中村さんは指摘する。

「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」を商いの原則とした近江商人。「傍(はた)を楽にすること」が「働く」の語源と言い伝えられる労働観。こうした誇るべき伝統が日本にはある。

「事業によって社会を良い方向に変え、働く人も自己実現を果たす。日本の生き方や働き方の原点に戻り、卒業生とともに働くことで社会変革を成し遂げる人を再び増やして、草の根から社会を変えたい」(中村さん)。その願いは社会起業大学を通じて着実に広がっている。(オルタナ編集部=石井孝明)

2011年8月31日(水)12:18

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