会場で悲鳴や怒号が飛び交う――東電・関電、ともに大荒れの株主総会

会場となった代々木第1体育館。株主総会が開始された10時の時点で3112人の株主が集まった

27日は、東京電力と関西電力で同時に株主総会が開かれた。東電の株主総会は午前10時から始まり、6時間で終了。関西電力はそれよりやや短い5時間半で終了したが、それぞれ会場は大荒れとなった。オルタナ編集部の記者が現場の様子をレポートした。

東京電力株主総会の会場となった代々木第1体育館には、合計4471人の株主が参加した。会場ではヤジが飛び交い、時折、悲鳴や怒号が聞かれるなど、大荒れの株主総会となった。

福島県から来た女性株主は壇上の役員たちに向かって「あなたたちは被災者たちに寄り添った支援と口では言うが、もし本気なら、福島に引っ越したらどうか」などとの質問が相次いだ。

今回の総会に夫婦で参加したという古荘斗糸子さん(73)は「こんなに多くの放射能をまき散らしておきながら、東電は原発を放棄すると明言しなかった」と憤る。

「間違えました。もう二度と過ちは繰り返しません、というのが福島の人たちに対する最低限の償いだ」と東電の不誠実さを指摘した。

会場では、反原発を訴える声が多く聞かれた一方、株価の暴落を危惧する一部の株主からは原発の再稼働を求める声も聞かれた。

都内に住む折橋一照さん(63)は「今日の株主総会の最大の問題点は、原発の再稼働について触れられなかったこと。福島の人たちの苦しみを思うと複雑だが、株主の立場から言わせてもらえば、原発を動かしてもらいたい」と内面を吐露した。(オルタナ編集部=赤坂祥彦)

大飯原発再稼動への批判が全国レベルで渦巻く中、注目の関西電力の株主総会は6月27日、梅田芸術劇場で行われた。

会場に集った反原発派

会場周辺には原発に批判的な人たちが多数集まり、会場の中に入る株主たちに「株主がんばれ」のシュプレヒコールが湧き上がっていた。

株主総会の質疑では、大飯原発再稼動の理由について豊松秀己副社長が「炉心損傷に至らないと確認した」と話すや、会場から野次が巻き起こり、「やめて~」という女性株主の悲痛な声も聞こえた。

また、国は原発を原則40年廃棄の法規制化も検討しているが、60年運転も可能という驚きの見解も飛び出した。

また、使用済み核燃料の再処理によって、将来的なウラン獲得競争から解放されるとし、もんじゅにも期待すると話すや、会場から野次とすごい拍手で騒然となった。

続いて、会場からの質疑に移り、2人目の質問者に矢田立郎神戸市長、3人目の質問者として橋下徹大阪市長が登場した。

橋下市長は「関西電力はこのままでは潰れてしまうのではいかと危惧している。衰退産業が歩んだ道を関西電力は歩んでいる」と厳しく切り出した。

さらに「成長産業の経営陣は、経営上の将来リスクをはっきりと株主に説明しているが、関電は説明が不十分。使用済み核燃料は原発の根源的な問題だ」と語りながら、再処理事業は今後も継続するか、中間処理施設は増設するのか、最終処分地はいつまでに作るのか、などの質問をした。

さらに、将来の経営上のリスクにも言及。家庭用電力は2年後に自由化されるのか、発送電分離は実施されるのか、40年廃炉のルールは確立されるのか、などに関して質した。途中で議長が「3分を超えていますので手短に」と結論を急ぐと、ものすごい野次と大きな拍手で騒然となった。

この後も10人以上の質疑が続き、議長解任の動議が出されるも、あっさり否決。強引に議事を進めようとする森議長に対してなおも動議を出した株主は食い下がり、係員から退席させられそうになる一幕も。

質疑は打ち切られ、株主提出議案の審議へと移る。趣旨説明のために福島から駆けつけた元教師の株主は次のように切実に訴えた。

「今回の原発事故で16万人が原発難民となり、家族分断となった人も大勢いる。最近、一時帰宅したものの絶望で自殺した人がいるが、新聞ではベタ記事だった。子どもたちに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。大飯原発は防潮堤のかさ上げもしていないし、再稼動すべきではない。福島の失敗に学んで欲しい」

こうした被災者の声も会場に訪れた株主たちに届くことはなく、28個の株主議案は次々と否決されていった。(横山 渉)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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