「今の除染は無駄」――飯舘の復興でシンポ

18日、福島で開催されたシンポジウム「福島原発事故が飯舘村にもたらしたもの」

福島県飯舘村の村民や支援者、研究者らが原発事故からの復興について話し合うシンポジウム「福島原発事故が飯舘村にもたらしたもの」が18日、福島市の県青少年会館であり、国の除染のあり方に厳しい声が上がった。

「飯舘村放射能エコロジー研究会(IISORA)」が初開催。同会は震災前から飯舘の村づくりにかかわってきた日本大学生物資源科学部教授の糸長浩司さん、環境ジャーナリストの小澤祥司さん、京都大学原子炉実験所助教の今中哲二さんが世話人となって8月に発足。会場には約120人が集まり、村民2人を含む7人が登壇した。

村で農業を営んでいた菅野哲さんは「放射能汚染は地域を分断し、心まで汚された。それが一番悲しい」と訴え、コミュニティーの再生や自立支援、雇用確保などで対策を急ぐよう求めた。

小宮地区の住民組織「新天地を求める会」の伊藤延由さんは東電への賠償請求資料を「今日、家で計ったら4.5キロあった」と示しながら、「請求しても支払われない理由がはっきりせず、電話で4時間も問い合わせた人がいる。こうした東電の態度が復興を妨げている」と憤った。

事故後にいち早く村の汚染度を測定した今中さんは「線量率から村民の被ばく量はある程度予測ができ、事故の翌日には国が警告を出して避難させなければならなかった。中枢機能も原子炉同様、メルトダウンしていた」と振り返り、「10年経って線量が落ち着くまで様子を見るしかない。その上で戻りたい人と国や村がどのレベルで戻るかのコンセンサスをとるべきだ。今の除染はあまりに急ぎすぎで、はっきり言ってお金の無駄だ」と指摘した。

「10年、20年でなく100年というタイムスケールでどう復興のビジョンを描くのか」という会場からの質問に、糸長さんは「村民と行政がもう一度オープンに議論すべきだ。そのための優先順位は除染でなく、ちゃんとした場所で生活の拠点をつくること」、菅野さんは「心の内は戻りたいのが当たり前だが、戻るに戻れない。村民がさまざまな選択肢をとれるようにならなければ」などと答えた。(オルタナ編集委員=関口威人)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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