2012年衆院選: 山本太郎氏を日本未来の党が支持、嘉田代表も駆け付ける

「石原慎太郎、伸晃親子を、絶対に当選させてはいけない。僕は、最強の人物を選んで、あえてこの東京8区から出馬することにしました!」

12月4日午後7時過ぎ、寒空の下、東京・高円寺駅前で、山本太郎氏の出馬第一声が響き渡った。東京8区は小選挙区制度に変わって以来5選を続ける石原伸晃・前自民党幹事長の強固な地盤であり、民主党は円より子氏、共産党は上保匡勇氏を擁立している。

山本太郎氏の主張は明確だ。①原発の撤廃、②反TPP、③反消費税増税、④反憲法第9条改正の4点だ。

特に「脱原発」に関しては、「この1年8カ月、被災地の地元の方々の声を聞くことはもちろんのこと、「全国のあらゆる場所でデモに参加し、色々と勉強してきた」(山本氏)というように、選挙演説では「なぜ、原発を撤廃すべきか」を具体的かつ明快に有権者に語りかける。「命を守ることより大事なことがあるのか」という言葉は熱い。

山本太郎氏は、当初、自民党にも民主党にも投票したくない市民の「最後の駆け込み寺」にしようと、新党「今はひとり」の立ち上げを目指し、国会議員5名の擁立を目指したが、告示日までに4日しかなく、あまりにも時間がなく断念した。

やむなく、無所属からの出馬となるが、出馬表明に呼応して、いち早く支持を打ち出したのが、脱原発を目指す「緑の党」だった。同党が資金難などで今回の衆議院選挙で候補者を出せなかった代わりに、主張を同じくする山本太郎氏を全面的にバックアップすることを決めた。

続いて支持を決めたのが、社民党。そして、驚くべきことに、12月4日の夜、演説も終わり、高円寺の駅前から最寄りの事務所に引き返そうとしていた矢先、嘉田由紀子・日本未来の党代表が現れ、「今日、日本未来の党も山本太郎氏を支持することに決めました!」と自ら表明。

山本太郎氏は「昨日、電話で嘉田党首に支持をお願いし、できることならば、第一声の演説にも来ていただきたいとお願いした。実は、日本未来の党から、比例代表での出馬要請も来たがお断りした。僕が出ることで、同党の他の候補の票を食ってしまっては、なんにもならない。それよりは無所属から出馬して、ウィングを広げる道を選んだ」という。

緑の党、社民党に続いて、「日本未来の党」が支持を決めたことで、東京8区は自民、民主、第3極筆頭の日本未来の党がそろい踏みしたことになり、石原伸晃・自民党前幹事長の当落を含めて、国政選挙のはっきりした縮図が出来上がった。

今後、この選挙区で山本太郎氏がどこまで支持を伸ばすのかは、選挙とその後の趨勢を占う指標の一つとなろう。

ちなみに、山本氏は出馬にあたり、12月1日に選挙資金のための口座を開設。週明けの3日には、300万円以上の寄付が集まったという。いかに有権者が熱い視線を山本太郎氏に注いでいるかがうかがえる。目が離せない選挙区となった。(ジャーナリスト=高馬卓史)

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高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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