北ドイツのハノーバーに本社のあるクッキー会社バールセンで、クッキーの看板が盗まれた。重さ20キロの金メッキの看板で、社屋の高さ5メートルのところに100年以上前から吊されていたものだ。
1月29日に、盗まれたクッキーの看板をかじるクッキーモンスターの写真と、手紙が会社に送られてきた。そこには「子ども病院にミルクチョコレートのクッキーを、動物保護施設に1000ユーロ(12万円)寄付したら、看板を返す」と書いてあった。
この物語のような話が、ドイツ全土で話題になっている。犯人からの手紙には「2月のある日、ブルト子ども病院にブラックチョコレートやチョコレートなしのクッキーではなく、ミルクチョコレートのクッキーを寄付すること」など細かい指示がされている。
30日、ウエルナーミヒャエル・バールゼン社長は「看板を返してくれたら、52の福祉施設に52000箱のクッキーをプレゼントしよう」と約束。しかし犯人に強制されて寄贈するのではなく、社会的企業として寄贈キャンペーンをするという姿勢だ。
看板の盗難と手紙について、地元紙ハノーバーアルゲマイネに市民からさまざまな声が寄せられている。中には「クッキーモンスター、素晴らしいよ。ありがとう。今も笑いがとまらない」という投書も。クッキーモンスターのぬいぐるみを着た愉快犯を応援する声もある反面、犯罪だと断罪する投書もある。
クッキーの看板は幅50センチ、高さ40センチ、厚さ4センチ。1月4日から21日の間に盗まれたらしいが、正式な日付はわからない。真昼間に作業服を着た二人組みが、堂々と取り外していたという声も。誰も盗みだと思わず、気にしなかった。
警察では「深刻な犯罪」として対処。窃盗罪はもちろん、脅迫罪が適用となるか審査している。ちなみにバールセンは1889年にハノーバーで創立された老舗で、青いパッケージで全国的に知られている。同社のフェイスブックのサイトでは、52000箱のクッキー寄贈について約4800人の読者が「いいね!」ボタンを押している。(オルタナ編集部=独ハノーバー・田口理穂)